神代踊(読み)じんだいおどり

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「神代踊」の意味・わかりやすい解説

神代踊
じんだいおどり

徳島県西部,三好市西祖谷山村善徳の天満神社で旧暦 6月25日の祭りに行なわれる芸能。神代踊の名は,1922年の皇太子(のちの昭和天皇)の訪村に際してつけられたもので,元は太鼓踊笠踊などと呼ばれていた。菅原道真が讃岐国府在任時,大干魃にあたって踊らせた雨乞踊が始まりとされ,雨乞いのときにも踊られてきた。祭り当日は頭屋の庭で踊ったあと,山の上にある天満神社の広場で踊る。友禅染で包まれた直径 1mの大きな太鼓を打つ太鼓打ち(5~8人)を始め,小学生以上の男性が担当する采振り,天狗,露払い,獅子,薙刀使い(→なぎなた),棒振り,奴(やっこ),身の丈ほどの大草履を背負う草履とり,たたき,カチカチ(綾竹打ち),笛吹き山伏修験者)の諸役のまわりを,20~30人の花笠をかぶり手には扇を持った女性の踊り子たちが円形に取り囲むかたちで行なわれる。踊りの曲は全部で 15曲あるが,14曲目の「日向踊」が終わると,踊り子たちはかぶっていた花笠を破る「笠取り」をする。国指定重要無形民俗文化財

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「神代踊」の意味・わかりやすい解説

神代踊
じんだいおどり

風流踊(ふりゅうおどり)の一つ。徳島県三好(みよし)市西祖谷山(にしいややま)村の田の内、善徳(ぜんとく)、下名(しもみょう)の3集落に伝承される。もと太鼓踊とか笠踊(かさおどり)とよばれたが、1922年(大正11)摂政(せっしょう)の宮上覧以来神代踊とよばれるようになった。善徳では天満神社の旧6月25日の祭りに行われる。踊りの人たちは、初め祭りの世話をする頭屋(とうや)に集まって3曲ほど踊り、神社の境内に向かう。行列が境内に入ると山伏の法螺貝(ほらがい)の合図で順回りの円陣をつくって「入羽(いりは)」を踊る。ついで法螺貝がふたたび鳴り、露払(つゆはら)い、獅子(しし)、薙刀使(なぎなたつか)い、棒振り、奴(やっこ)、草履(ぞうり)取りなどは円外に退き休息。ここで踊り子たちが、太鼓、鉦(かね)、カチカチ(綾竹(あやたけ)打ち)などの囃子(はやし)と踊り子自身の歌にあわせて「これのお庭」ほか6曲を踊る。法螺貝の合図で休息していた人たちも輪に加わり、歌のない囃子だけの踊りを踊りながら退場、これを「出羽(では)」という。休息後にふたたび「小原木」ほか6曲踊り、番外の「柳踊」で納める。雨乞(あまご)いに起源した大掛りな芸能で、重要無形民俗文化財に指定されている。

[萩原秀三郎]


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世界大百科事典(旧版)内の神代踊の言及

【綾踊】より

…30cmほどの竹に色紙を巻き両端に房を付けた綾竹を両手に持って拍子をとりつつ踊る。和歌山県新宮市三輪崎の鯨踊,神奈川県三浦市三崎のチャッキラコ,岐阜県大野郡宮村の神代踊などに残る。風流(ふりゆう)踊(風流)のうち踊り手が千鳥掛けに入れかわる曲を称するところもある。…

【風流踊】より

…伝承にあたっては,中世の郷を単位として踊る所も多く,数ヵ所が集まったり,交代で演じたりする所もある。京都市左京区八瀬の〈赦免地踊(しやめんちおどり)〉,同じく久多の〈花笠踊〉,三重県伊賀町山畑の〈かんこ踊〉,滋賀県甲賀町油日神社の太鼓踊,兵庫県養父郡大屋町大杉の〈ざんざか踊〉,愛知県新城市大海の〈放下〉,山口県熊毛郡熊毛町八代の〈花笠踊〉,広島県山県郡千代田町本地の〈花笠踊〉,香川県仲多度郡仲南町佐文(さぶみ)の〈綾子踊(あやこおどり)〉(国指定重要無形民俗文化財),徳島県三好郡西祖谷山村の〈神代踊(じんだいおどり)〉(国指定重要無形民俗文化財),鹿児島県西之表市種子島の〈大踊〉などその数は多く,芸態も多様である。なお,歌舞伎の祖といわれる出雲お国が始めた踊りや,若衆かぶきの踊りも,風流踊を舞台化したものといわれる。…

※「神代踊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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