神道式の葬祭(葬式と祭祀)をいう。仏葬,儒葬(じゆそう)に対する名称。神道では古来死を穢れとして忌避するが,死者の霊魂は浄化すればやがて祖霊として神にまつられるという思想にもとづき,遺体を埋葬する前に遷霊祭を執行して位牌(霊璽(みたましろ))に霊魂を憑(よ)り移らしめ,1年後の忌明けに祖霊へ合祀するのを原則とする。現行の神葬祭は近世の後期に排仏思想が高まるにつれて当時の仏葬祭に対抗して神道家や国学者が考案したものにもとづく。先駆的には徳川光圀が《神道集成》に神葬祭の儀式を編入してその普及を図り,神祇伯の吉田家も配下の神職とその嫡子の神葬祭を幕府に認めさせた。近世後期には国学の普及とともに全国各地の神職から神葬祭復興の運動が盛り上がり,明治維新後の廃仏毀釈の風潮のなかで政府は1872年(明治5)に初めて公式に神葬祭を認め,青山墓地などを造成してその普及を奨励した。当時各地での廃寺や離檀の動きに合わせて神葬祭が民間に広まったが,82年のいわゆる神官教導職分離令を契機にその動向も収まった。
執筆者:阪本 是丸
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