律令制の神祇官の長官。従四位下相当官。神祇の祭祀,祝部(はふりべ),神戸(かんべ)の名籍,大嘗,鎮魂,御巫(みかんなぎ),卜兆のこと等をつかさどり,神祇官を惣判した。伯は,はじめ,大中臣,巨勢(こせ),石川,文室,多治比,藤原等各氏が混任し,太政官に本官を持つ者の兼官が多かった。しかるに,平安時代中期876年(貞観18)に棟貞王が,神祇伯に任官して以降,多く皇親である王が任官するようになり,先例となった。花山天皇の孫の延信王が任官し,その曾孫顕広王がまた任官して以来,王の子孫が神祇伯を世襲し,白川伯王家,もしくは白川家を称した。この家は神祇伯が王の就任する官であるため,花山源氏であるにもかかわらず任伯と同時に王を称する例がある。この例を開いたのは,甥資光王若年のため源姓の賜姓後神祇伯に任官した顕広王の孫源資宗である。以後,神祇伯任官以前は源氏を称し,任官後王号を称するという例は明治維新までつづいた。
執筆者:阪本 是丸
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律令官司の一つで神祇官の長官。職員令によれば神祇(神社)祭祀,祝部(はふりべ)・神戸(かんべ)の名籍(名帳と戸籍)のほか,大嘗(新嘗)・鎮魂祭・御巫(みかんなぎ)・卜兆(ぼくちょう)(卜占)をつかさどる。官位相当は従四位下で八省の卿よりも低く,中宮大夫・春宮大夫と同じ。はじめ神祇氏族の中臣(なかとみ)氏がおもに任じられたが,9世紀には天皇の姻戚・近臣者が多くなり,やがて王氏の補任(ぶにん)が慣例となった。平安末期の花山天皇後裔の顕広王(あきひろおう)補任以後は,その子孫(白川家)が明治維新まで世襲し,同家は伯家(はっけ)・伯王家とよばれた。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…花山天皇より出た源氏。代々神祇伯(神祇官の長官)に任ぜられて明治維新に及んだので,伯家ともいう。また神祇伯に任ぜられると某王と称することを許され,その女は女王と称した特異な家である。…
…官衙の場所は宮城内の郁芳門の南脇にあった。神祇官の長官は神祇伯といい,従四位下相当官。神祇の祭祀,祝部(はふりべ),神戸(かんべ)の名籍,大嘗,鎮魂,御巫(みかんなぎ),卜兆および官事を惣判することを任とした。…
※「神祇伯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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