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神話学 シンワガク

百科事典マイペディアの解説

神話学【しんわがく】

神話の解釈・批評(批判を含む)を行う学問。神話理解の多様性に応じて古来多くの説が立てられ,またルネサンス以降は神話画制作の手引きなどとして用いられたが,飛躍的な進展をみたのは比較言語学が確立した19世紀後半以降。

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世界大百科事典 第2版の解説

しんわがく【神話学 mythology】

神話の研究の歴史は,古代ギリシアまでさかのぼらせることもできるが,近代的学問としての〈神話学〉は,19世紀後半に,比較言語学の成果に刺激されてギリシアやインド,ゲルマンなどインド・ヨーロッパ語系の民族の神話を比較研究した,マックス・ミュラーやアダルベルト・クーンAdalbert Kuhn(1812‐81)ら,〈自然神話学派〉の学者たちによって創始されたと見ることができる。すべての神話を,太陽や嵐など印象的な自然現象に結びつけて解釈したこの派の学説は,やがてアンドルー・ラングによって代表される〈人類学派〉からの徹底的な批判を浴びて落した。

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大辞林 第三版の解説

しんわがく【神話学】

神話の本質・意味・社会的機能・構造、および起源・発展・分布・伝播・変容などを研究する学問。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

神話学
しんわがく
mythology

神話を研究する学問。主として文化人類学の発達により、神話学は20世紀の中葉以後、今日までの短期間に面目を一新するほどの変貌(へんぼう)を遂げた。20世紀前半まで、大多数の専門家は、知能的、文化的にあるレベルに達しない限り、神話の発生そのものが無理だと考えていた。そしてすべての神話は、もとは呪術(じゅじゅつ)でしかなかった儀礼の由来を、太古の神々の活動と結び付けて説明する目的で生み出されるとして、儀礼こそがその発生の基盤とみなされていた。つまり神話の正しい解釈は、それを生み出した儀礼との結び付きを解明することにほかならないと考えられていた。
 このような誤解は、地球上の多くの民族を未開な野蛮人とみなした偏見から生まれた。この偏見からの皮相な観察の報告を机上で分析し、また照合することによって生み出されたのが、エドワード・バーネット・タイラーやジェームズ・フレーザー、デュルケーム、レビ・ブリュールら、当時の神話観に支配的影響力をもった人類学の権威たちの学説である。それは、彼らが「未開人」とか「野蛮人」とよんでいやしめた人々とその文化の、事実とはまったく相違したフィクションでしかなかった。これら初期の人類学説から脱して、新しい人類学者たちにより、学問的方法で行われるようになった現地調査の結果から、神話は、人類にとって普遍的な文化事象であるという事実が認識された。そしてこの時点で、現代の神話研究の新しい歩みが始まったといえる。
 神話研究の対象となる資料は、2種類に大別できる。一方は、たとえばギリシア神話や日本神話などのように文献に残されている神話であり、そのなかにはエジプトやメソポタミアの神話のように、考古学的発掘によって資料が発見され、解読されたものも含まれる。もう一方は、口伝えで伝承されている無文字民族の神話であり、その採集と研究は文化人類学者によってなされる。つまり、一方は文献学、他方は文化人類学と方法は大きく違うが、どちらの場合にも神話の研究のためには、それを生み出した文化についての専門的知識が不可欠である。しかしその反面で、一つの神話体系の研究だけからはけっして十分な理解は得られないので、別の文化の専門家による研究成果が絶えず参酌される必要がある。とくに古代神話研究家の間には、過去の人類学説の謬見(びゅうけん)に対する反発から、たとえばギリシア神話ならもっぱら古代ギリシア文化の枠内だけで研究することを学問的とみなすような傾向が、最近まで根強くみられたのである。
 しかし、文化人類学的研究の対象となる無文字民族の神話には、現在でもなお現実に伝承され、また機能しているありさまを観察できる可能性も残されている。したがって古代神話の研究は、神話の本質が文化人類学によって解明されるという理解のもとに行われる必要がある。事実ギリシア神話の研究も、フランスのベルナンJ. P. Vernant(1914―2007)とデティエンヌM. Detienne(1935― )やイギリスのカークG. S. Kirk(1921―2003)など、文化人類学説に顧慮する人々によってリードされるようになってきた。彼らは、神話学一般にも重要な寄与を果たし、現代を代表する神話学者のなかに数えられる。
 現代の神話学の革新にもっとも重大な貢献をした学者としては、デュメジルG. Dumzil(1898―1986)と、レビ・ストロースをあげなければならない。フランスの比較神話学者デュメジルは、インド・ヨーロッパ語族神話に共通する構造を、かなり細部にまでわたって復原させ、完全な沈滞状態に陥っていたインド・ヨーロッパ比較神話学を再生させた。フランスの文化人類学者レビ・ストロースは、デュメジルの研究から強い刺激と影響を受けながら、言語学をモデルにした斬新(ざんしん)な構造分析の方法を考案し、それをアメリカ原住民の神話の比較分析に適用した。『神話論』という共通の副題をつけられた4巻の大著に集成されたレビ・ストロースの業績は、デュメジルの膨大な著作とともに、現代神話学の二大金字塔である。
 またスイスの深層心理学者ユングが、「原型の理論」によって、人類に普遍的な神話産出能力の解明に寄与したことも、軽視すべきではあるまい。現代でも神話あるいは擬似神話は、それと意識されずに人々に信じられ、古来神話が果たし続けてきたのと同じ機能を、現代の文化のなかで果たしつつある。ユングの理論は、神話など一見まったく喪失したようにみえる現代文化のなかでも、なお連綿と続いている神話の働きを解明すると同時に、人間とその文化に神話が不可欠である理由を明らかにするための有効な鍵(かぎ)を提供するように思われる。[吉田敦彦]
『大林太良著『神話学入門』(1966・中公新書) ▽G・デュメジル著、松村一男訳『ゲルマン人の神々』(1980・日本ブリタニカ) ▽C・レヴィ・ストロース著、荒川幾男他訳『構造人類学』(1972・みすず書房)』

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