日本の科学技術の振興を促す国立研究開発法人。英語名はJapan Science and Technology Agency、略称はJST。特殊法人改革の一環として、日本科学技術情報センター(1957年設立)と新技術事業団(1961年設立、1989年までの名称は新技術開発事業団)が統合されて1996年(平成8)に発足した科学技術振興事業団が前身。2003年(平成15)に独立行政法人化と同時に現名称になった。2015年には、独立行政法人の一種で、研究開発成果の最大化を目的とする国立研究開発法人となった。根拠法は国立研究開発法人科学技術振興機構法(平成14年法律第158号)。所管官庁は文部科学省で、国の科学技術振興策に沿った研究開発費の助成や出資を担う資金配分機関の一つである。おもな業務は、(1)新技術の創出に資することとなる科学技術に関する基礎研究および基盤的研究開発を行うこと、(2)企業化が著しく困難な新技術について企業等に委託して企業化開発を行うこと、(3)新技術の企業化開発について企業等にあっせんすること、(4)大学に対し、国際的に卓越した科学技術に関する研究環境の整備充実並びに優秀な若年の研究者の育成および活躍の推進に資する活動に関する助成を行うこと、(5)内外の科学技術情報を収集・整理・保管・提供、および閲覧させること、(6)科学技術に関し、知識を普及し、並びに国民の関心および理解を増進すること、などである。従来技術の延長上にない、困難だが実現すれば社会に変革をもたらす「ムーンショット型研究開発制度」(2019年度~)をはじめ、量子、AI(人工知能)、IT(情報通信)、カーボン・ニュートラル分野などの技術革新を支援している。なお会計検査院の投資損益調査(2017年3月末)では、同機構のファンドによる出資型新事業創出支援プログラム(SUCCESS(サクセス))が2億円の損失状態にあり、2022年の大学ファンド(世界最高水準の研究大学の実現に向けて、「国際卓越研究大学」を認定し、必要な支援を行うための基金)の運用も604億円の赤字となるなど、ファンド運営が課題であると指摘されている。本部を埼玉県川口市と東京都千代田区に置く。職員1414人、資本金1兆3143億1400万円(2023年3月末時点)。
[矢野 武 2024年7月18日]
文部科学省が所管する国立研究開発法人で,課題解決型の戦略的な基礎研究や基盤的な研究開発のほか,新技術の事業化支援,科学技術情報基盤の整備,科学教育の促進により,科学技術の振興を図ることを目指している。前身は1957年(昭和32)に設置された日本科学技術情報センターと,61年に設置された新技術開発事業団(日本)(1989年に新技術事業団(日本)に改称)が合併して96年(平成8)に誕生した科学技術振興事業団(日本)で,2003年に独立行政法人,15年に国立研究開発法人となった。日本学術振興会と並ぶ,文部科学省の代表的な資金配分機関(日本)である。2009年から革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)や戦略的イノベーション創造プログラム(SIP),最先端研究開発支援プログラム(FIRST)といった内閣府と総合科学技術・イノベーション会議が主導する大型プログラムの運営管理も担っている。創造的な研究開発による科学技術イノベーションの実現,「バーチャルネットワーク型研究所」として世界の知の結集,科学技術基盤の整備による科学技術イノベーションの加速化の3点がビジョンに掲げられている。
著者: 榎孝浩
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