アルカリ土類金属(読み)あるかりどるいきんぞく(英語表記)alkaline earth metals

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルカリ土類金属」の意味・わかりやすい解説

アルカリ土類金属
あるかりどるいきんぞく
alkaline earth metals

周期表第2族のうちカルシウムストロンチウムバリウムラジウムの4元素総称。これにベリリウムマグネシウムを加えた6元素をいうこともある。ラジウムは放射性元素である。

 古くはアルカリアルカリ金属の水酸化物など)となる金属と「土(ど)earth」類(アルミニウムの酸化物など、水に溶けず火にも強いもの)金属との中間的な性質を示すことから、このようによんでいた。ベリリウムおよびラジウムを除いては比較的多量に存在する。マグネシウム、カルシウムは、地殻を構成する8元素(元素の存在度1%以上)に入り、また、生物体中にも存在し、広く分布する。単体はすべて銀白色または灰白色の金属で、空気中ではしだいにさびて光沢を失う。融点、沸点ともアルカリ金属よりも高く、密度も大きい。ラジウムを除いてすべて軽金属に属する。アルカリ金属に次いで陽性が著しく、つねに2価陽イオンとしての化合物をつくりやすい。またイオン化傾向は大きく、化学的性質は活発である。金属は一般に水素窒素、酸素、塩素などとは直接化合する。水とはベリリウム、マグネシウムは徐々に、カルシウム以下は原子番号が大きいほど激しく反応して水素を発生し、水酸化物となる。水酸化物は一般に強塩基で、アルカリ金属に次ぐが、水酸化ベリリウムのみは両性である。ベリリウムおよびマグネシウムの水酸化物は難溶性であるがカルシウム以下はしだいに溶解度が大きくなる。化合物の性質はそれぞれよく似ているが、ベリリウムは例外で、むしろアルミニウムによく似ている。多くの酸と塩をつくるが一般に無色。塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩などは水に溶ける。フッ化物、リン酸塩、炭酸塩などは難溶性である。水酸化物、炭酸塩、硝酸塩は熱すると酸化物になる。一般に安定な錯化合物はつくりにくいが、エチレンジアミン四酢酸などとは安定なキレート化合物をつくるため、それらはマグネシウム、カルシウムなどの定量に用いられる。炎色反応はカルシウムは橙(だいだい)色、ストロンチウムは深紅色、バリウムは黄緑色、ベリリウムとマグネシウムは無色である。

[中原勝儼]

『高本進・稲本直樹・中原勝儼・山崎昶編『化合物の辞典』(1997/普及版・2010・朝倉書店)』『J・A・コーワン著、小林宏・鈴木春男監訳『無機生化学』(1998・化学同人)』『F・A・コットン、G・ウィルキンソン、P・L・ガウス著、中原勝儼訳『基礎無機化学』(1998・培風館)』『内田希・小松高行・幸塚広光・斎藤秀俊・伊熊泰郎・紅野安彦著『無機化学』(2000・朝倉書店)』


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アルカリ土類金属」の意味・わかりやすい解説

アルカリ土類金属
アルカリどるいきんぞく
alkaline earth metal

周期表2族のカルシウム,ストロンチウム,バリウム,ラジウムの4元素の総称。単体は比較的活性であり,溶融塩電解によって製造される。銀白色の金属で軟らかく,希ガス構造の2価の陽イオンになりやすい。電気的に陽性で共有結合の化合物はできにくい。水,酸素との反応はアルカリ金属ほど激しくない。水酸化物の水溶液は強アルカリ性を示す。窒化物,水素化物,炭化物は加水分解し,それぞれアンモニア,水素,アセチレンを発生する。塩は一般に水溶性であるが,フッ化物,硫酸塩,炭酸塩,リン酸塩は難溶。炎色反応はカルシウムが橙赤色,ストロンチウムが深赤色,バリウムが淡緑色,ラジウムが鮮紅色である。

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