日本大百科全書(ニッポニカ) 「立枯病」の意味・わかりやすい解説
立枯病
たちがれびょう
作物の根や地際(じぎわ)部が病原菌に侵され、地上部に養分や水分が供給できなくなり、葉が黄化、萎凋(いちょう)して立ち枯れになる病気。苗(なえ)の時代に発生するものは、とくに苗立枯病と称して区別している。多くの作物に発生し、病原の種類も多いが、病原はいずれも土壌中に生息しており、土壌伝染性の病気である。
代表的な立枯病には次のようなものがある。(1)タバコ立枯病は、収穫直前のタバコに発生し、葉が褐色になって枯れ、収穫できなくなり、被害が大きい。病原は細菌の一種で、ラルストニア・ソラナセアルムRalstonia solanacearumである。なお、この菌はトマト、ナスなど多くの作物を侵すが、タバコ以外はいずれも青枯病とよばれている。(2)コムギ、オオムギの立枯病は枯れ熟れになり、実が入らない。被害株の地際部は黒褐色になる。子嚢(しのう)菌(カビの一種)のゴイマノミセス・グラミニスGaeumanomyces graminisが病原菌である。(3)ダイズ、エンドウ、ソラマメ、カーネーション、ケイトウなどの立枯病は、フザリウム・オキシスポルムFusarium oxysporumのほか、2、3のフザリウム属のカビの寄生によっておこる。(4)ゴマ、ミツバ、チョウセンニンジンの立枯病は、リゾクトニア・ソラニRhizoctonia solaniというカビが病原である。この菌は、このほか多くの作物を侵すが、トマト、ナス、キュウリなどでは、苗のときによく侵されるので、とくに苗立枯病といわれる。(5)アスター、ホウレンソウの立枯病は鞭毛(べんもう)菌類という下等なカビであるピシウムPythium属が病原である。一般に立枯病は土壌病害であるため防除が困難であるが、同じ作物を続けて栽培しないように心がける。
[梶原敏宏]