日本大百科全書(ニッポニカ) 「竹馬抄」の意味・わかりやすい解説
竹馬抄
ちくばしょう
南北朝・室町初期の武将斯波義将(しばよしまさ)の作と伝えられる教訓書。1巻。奥書に「永徳(えいとく)三年(1383)二月九日 沙弥(しゃみ)判」とあるのが誤りないものとすれば、義将が二度目の管領(かんれい)在任中の著作となる。義将は『新後拾遺(しんごしゅうい)和歌集』にも名をとどめており、室町幕府4代将軍足利義持(あしかがよしもち)の時代の文武両道を兼備した代表的な武将であった。本書は、序と10か条の教訓からなり、主として「おほやけ姿」(外形からみた人のあるべき姿)や「眼(め)」(事物の本質を見抜く能力)を備えた人となるべきことを教訓し、これに基づいて武士の心得や作法、仏神を信じ心を正直にもち、道理に従い、『源氏物語』や歌道によって物のあはれを知る文武兼備の武士となるべきことが教訓される。
[小澤富夫]
『「竹馬抄」(塙保己一編『群書類従 雑』所収・1929・群書類従完成会)』▽『「竹馬抄」(同文館編集局編『日本教育文庫 1』所収・1910・同文館)』▽『「竹馬抄」(佐伯有義他編『武士道全書 1』所収・1942・時代社)』