管理学(読み)かんりがく

日本大百科全書(ニッポニカ) 「管理学」の意味・わかりやすい解説

管理学
かんりがく

管理に関する理論とそれを基盤にした管理技術の総合的体系をいう。管理論あるいはマネジメントともよばれる。その内容は、管理一般に関する理論、技術であるよりは、組織体のための経営管理学である。このような管理学の発展は、20世紀初頭から1930年ころまでの古典派時代、50年ころまでの新古典派時代、それ以後の現代派時代に三分される。

 管理学の源流は、アメリカの科学的管理の創始者F・W・テーラー(1856―1915)とフランスの一般管理学の提唱者H・ファヨール(1841―1925)にさかのぼる。彼らは、経験や勘によるそれまでの管理にかえて管理の科学を樹立しようとしたが、テーラーは現場作業の管理から出発し、ファヨールは全体的構造なかに管理を位置づけ、その分析から出発するというように、内容展開はきわめて対照的であった。彼らに始まる古典派管理学の特徴として、機能分析的接近方法、物的・受動的人間観、各種管理原則の提唱、および外部環境を軽視して内部管理に中心を置いたことなどがあげられる。その後、物的・受動的人間観と機能分析的接近方法の2点が主として批判され、新古典派時代に移行する。その中心は人間関係論human relationsであり、組織構成員は単なる機能的存在ではなく、社会的、情緒的な心情によって行動する非合理的存在であって、このような人間の管理には人間の心理に即した理論と技術が必要であることを説いた。またこの時代には管理会計managerial accountingも現れ、会計数値の利用による合理性の向上が図られた。しかし、これら新古典派の主張はいずれも批判されて、新しい視点から修正され、まとめられて現代派へと脱皮する。まずその人間観は、行動科学behavioral scienceにより、人間は環境に左右されるだけの情緒的、非合理的存在ではなく、環境の制約のなかで極力合理的であろうとする存在であると修正される。また、管理科学management scienceにより、過去数値である会計を包摂しながら、予測に付きまとう不確実性緩和克服が試みられるようになる。また、古典派以来の特色であった各種管理原則は、実証によって鍛え直され、外部環境軽視の管理論は、システム論、とくにオープン・システム論の援用による環境適応の管理論へと拡大される。このように関連科学の成果を十二分に吸収しつつ、しかも新しい統一視点として意思決定を用い、情報理論によって補強しながら全体をまとめ上げているのが現代派である。その特色としては、意思決定中心の管理行動研究にあり、それを支えるものは、システム的接近、主体的人間観、検証による諸命題、環境適応的管理行動などの諸点があげられる。

 管理学は、企業組織を基盤に経営管理学として成立、発展したが、現在では、組織体一般に適用可能な総論ないし一般管理学と、目的を異にする特定の組織体に特有の管理問題を扱う各論ないし特殊管理学とがある。特殊管理学には、企業管理学、行政管理学、病院管理学、学校管理学、労働組合管理学、軍隊管理学などがある。

[森本三男]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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