一般の需要に応じて水道により水を供給する事業(水道事業)のうち,計画給水人口が101人以上5000人以下のものを簡易水道事業という。水道事業は独立採算を原則としているが,農山漁村などで小集落のために水道施設の建設費を負担しきれない地域へ,高率の国庫補助を行って水道を普及させる目的で行政上設けた区分と名称である。上水道(計画給水人口5001人以上)と簡易水道は,水質基準,施設の技術基準ともまったく同一で,両者の違いは単に建設時点での計画給水人口規模の差だけにある。上水道に数倍する数の簡易水道が町村営などで存在し,10%弱の国民に生活用水が供給されているが,一事業体当りの平均規模はきわめて小さく,給水人口は690人,1日最大給水量は200m3程度である(1992)。したがって財政的に不利であるばかりでなく,水源に恵まれた一部の水道を除いて,施設管理が行き届きにくいうらみがある。近年,浄水管理水準の高度化と経営効率の向上をはかって,広域合併または近隣都市の上水道へ併合するものも平野部では多く,総事業体数は新設数を相殺して減少の傾向にある。しかし山間部や市街地から離れた漁村などでは,将来ともそれぞれの集落ごとに水道を造り守っていくしかない所が多い。簡易水道の特徴として,(1)水源を河川水よりも地下水に依存している比率が高い(事業体数にして35%が地下水を,27%が湧水を,10%が伏流水を取水している),(2)良質の水源に恵まれ比較的簡単な処理で供給されている例が多い(数にして60%が塩素殺菌のみで給水しており,24%が緩速ろ過方式の浄水方法によっている),(3)反面,良質の水源に恵まれず,原水に鉄,マンガン,天然有機物などが含まれていて,複雑高度な水処理を余儀なくされている水道もある(数にして7%),(4)給水量の時間変動が大きく(平均値の2~4倍),とくに火災発生時にはなはだしいため大きな配水施設を必要とする,などがあげられる。
→水道
執筆者:小林 三樹
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農山漁村など小さな集落で、101人以上5000人以下の人々へ給水することを目標にして建設された小規模な水道。水道事業は独立採算制が原則であるが、人口密度が低いために1戸当りの配管延長が長く、財政的、地形的に水道の建設に不利な都市部以外の地域にも水道の普及を図るため、国が小規模の水道の建設に高率の補助金を交付することになって、1952年(昭和27)に設けられた行政上の名称区分である。したがって、給水の水質や施設の内容が簡易という意味ではなく、それらには一般の上水道と同一の基準が適用されている。1999年(平成11)現在9370の簡易水道事業体(大半は町村営)があり、約665万人がこれを通じて給水を受けているが、なかには水量不足や水質の維持に苦慮しているところもあるものの、地下水を水源としている例が多く、水質は一般に良好である。散在する施設の管理の高度化と効率化を図って、平野部では簡易水道事業相互の合併による再編成や、近隣都市の水道への併合が進められている。
[小林三樹]
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