籠もる(読み)コモル

デジタル大辞泉 「籠もる」の意味・読み・例文・類語

こも・る【籠もる/隠る】

[動ラ五(四)]

㋐中に入ったまま外に出ないでいる。引きこもる。「山に―・る」「書斎に―・って執筆する」
㋑外とのつながりを断って、中に深く入り込む。閉じこもる。「自分の殻に―・る」「いんに―・る」
祈念するために社寺に泊まり込む。おこもりをする。「寺に―・る」
城などに入って敵から防ぎ守る。立てこもる。「城に―・る」
音や声が中に閉じこめられた状態で、外にはっきり伝わらない。くぐもる。「声が―・ってよく聞こえない」
気体などが外に出ないで、いっぱいに満ちる。充満する。「臭いが―・る」「会場に人の熱気が―・る」
力やある感情などが、そこにいっぱいに含まれる。「力の―・った演技」「熱の―・った言葉」「心の―・った贈り物」「怒りの―・った声」
包まれる。囲まれる。
たたなづく青垣山―・れる大和しうるはし」〈・中・歌謡
入って隠れる。
二上ふたかみの山に―・れるほととぎす今も鳴かぬか君に聞かせむ」〈・四〇六七〉
[可能]こもれる
[類語]引き籠もる閉じ籠もる立て籠もる閉じ込める降り籠める

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「籠もる」の意味・読み・例文・類語

こも・る【籠・隠】

  1. 〘 自動詞 ラ行五(四) 〙
  2. 中にはいって、出ないでいる。家や部屋などにとじこもる。
    1. [初出の実例]「松が枝の地(つち)につくまで降る雪を見ずてや妹が許母里(コモリ)(を)るらむ」(出典:万葉集(8C後)二〇・四四三九)
    2. 「かひこは、此巣の中にこもりて、凡そ十三日間眠るものなり」(出典:尋常小学読本(1887)〈文部省〉三)
  3. 人目につかないようにはいって、隠れる。
    1. [初出の実例]「畝傍山 木立薄けど 頼みかも 毛津の若子(わくご)の 虚茂邏(コモラ)せりけむ」(出典:日本書紀(720)舒明即位前・歌謡)
  4. 神社、寺院などにとまって祈念する。参籠(さんろう)する。
    1. [初出の実例]「ながき精進もはじめたる人、山寺にこもれり」(出典:蜻蛉日記(974頃)中)
  5. 城などの中にはいって防ぎ守る。籠城(ろうじょう)する。
    1. [初出の実例]「湯浅権守宗重をたのんで、湯浅の城にぞこもられける」(出典:平家物語(13C前)一二)
  6. 物の中に含まれて、ある。「力のこもった声」
    1. [初出の実例]「梅の花咲けるが中にふふめるは恋や許母礼(コモレ)る雪を待つとか」(出典:万葉集(8C後)一九・四二八三)
    2. 「うはへは人になびき、おいらかに見えながら、うちとけぬ気色したにこもりて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若菜下)
    3. 「普通我々が口にする好い加減な挨拶よりも遙に誠の籠(コモ)った純粋のものぢゃなからうか」(出典:行人(1912‐13)〈夏目漱石〉兄)
  7. 気体などが、中にいっぱいに満ちる。
    1. [初出の実例]「ヘヤニ クウキガ komoru(コモル)」(出典:和英語林集成(初版)(1867))
  8. 音や声が内に閉じこめられ、はっきり聞こえない状態である。くぐもる。「口の中にこもった声」
    1. [初出の実例]「号令は烟の中から綿を隔てて聞くやうに、物に籠(コモ)って陰々と聞える」(出典:雑嚢(1914)〈桜井忠温〉二三)

籠もるの語誌

下二段他動詞「こむ」に対する自動詞。ものが遮蔽物に囲われて外部から見えない状態にあることをいう。類義語「かくる」が遮蔽物にさえぎられて、視野から消え去る動作をいうのとやや異なる。しかし、「観智院本名義抄」の「」「蟄」にコモル・カクルの両訓が見られ、「水戸本乙日本紀私記‐神代上」に「閉居 古毛利為太万布(コモリヰタマフ)加久礼以万須(カクレイマス)」とあることからすると、両語は意味的に近く用いられていたようである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

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