米福粟福(読み)こめぶくあわぶく

精選版 日本国語大辞典 「米福粟福」の意味・読み・例文・類語

こめぶく‐あわぶく‥あはブク【米福粟福】

  1. 〘 名詞 〙 昔話一つ。米福・粟福の姉妹うち継子(ままこ)姉娘継母から事毎に意地悪されるが、死んだ実母の霊や妹に助けられ幸福になるという話。代表的な継子話の一つで、「糠福米福」「紅皿欠皿」「継子の栗拾い」などという名で全国的に分布している。

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改訂新版 世界大百科事典 「米福粟福」の意味・わかりやすい解説

米福粟福 (こめぶくあわぶく)

昔話。継子米福が継母とその実子粟福の虐待に耐えて,幸福な結婚に到達するまでを語る継子いじめ譚。継母は継子に水くみ,栗拾い,糸紡ぎ,麦つきなど苦労の多い労働を課すが,亡母の霊の加護によってきりぬける。祭見物で身分の高い若者に見出されて,継子は幸福な結婚をする。継母と実子は不幸になるという筋立てが一般的である。継子いじめ譚は,日本でとりわけ発達をみた。継子に対する継母の過酷な態度は外国の例と趣を異にする。多様な継子いじめ譚の中で〈米福粟福〉の話型は,シンデレラ型と対応して分類されるが,この話型は完全にシンデレラ型と合致しない。厳密には,婚姻譚を含む後半部に共通点を見いだすというべきである。継子いじめ譚最古の文献酉陽雑俎》に描かれる葉限と継母の対立抗争は,この話型に似通うものである。《住吉物語》《落窪物語》も同系統である。〈米福粟福〉の継母と継子との間に生じる対立と葛藤の主題は,文芸的にもかなり古いものとされる。米福と粟福は継子と実子の間柄であり,対立関係にあるはずであるが,この娘粟福は,時に継子の援助者としても語られる。この粟福の存在が,日本の継子いじめ譚を多様に複雑な発展へと導いている。継母が米福に与える困難を,女性の基本的労働とみなし成女戒のなごりをとどめるものとする解釈も行われる。
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