日本大百科全書(ニッポニカ) 「精測進入レーダー」の意味・わかりやすい解説
精測進入レーダー
せいそくしんにゅうれーだー
precision approach radar
英文表記を略してPARと称する。GCA(地上誘導着陸装置)を構成するレーダーの一つで、滑走路に向け着陸体制に入った航空機を、地上の管制官が最終進入開始地点から着陸まで、降下路に沿って正しく飛行するように誘導する装置である。
降下路は滑走路の延長線上に水平面に対して2.5~3.0度の角度に設定されており、この降下路上の航空機の位置を正確に測定するために、PARは二つのアンテナをもっている。一つは滑走路中心線の延長線に対する左右のずれと着陸地点までの距離を測定する方位アンテナで、扇形ビームにより水平方向に走査する。もう一つは降下路の傾斜角に対する上下のずれと着陸地点までの距離を測定する高低アンテナで、扇形ビームにより上下方向に走査する。これらのアンテナは航空機の進入の障害とならないよう滑走路に沿って着陸点より後方に設置してある。これには一定の場所に固定したものと、トレーラーに装備して移動が可能なものとがある。
送信周波数は9000~9180メガヘルツ、送信出力25~50キロワット、有効距離18.5キロメートルである。
レーダーのエコーは指示器の残光性をもったCRT(ブラウン管 cathode ray tubeの略称)面に表示される。CRTの表示は、上半分が高低アンテナ走査による垂直面の画像、下半分が方位アンテナによる水平面の画像の組合せになっており、それぞれ降下路とセーフティー・リミットおよび着陸地点からの距離を示す目盛りが記されている。PARは最終進入段階にある航空機を誘導するので、とくに測定を精密に行う必要がある。そのため指示器上ではEPI(位置拡大表示 expanded position indicatorの略称)方式を用いて、高低角表示では10倍程度に、方位角表示では3倍程度に拡大して表示している。
地上の管制官はCRT上の航空機のエコーを連続的に測定しながら、VHFまたはUHFの無線電話によってパイロットに機首方位や高度の指示を与え、降下路からずれないように誘導する。PARの操作には熟練した管制官が多数必要であり、しかも精度はILS(計器着陸装置)より劣るため、現在民間航空用飛行場ではほとんどILSにとってかわられている。しかし、PARはILSと比べ特別な機上の装備を必要とせず移動に便利なため、軍用飛行場では現在も使用されている。
[青木享起・仲村宸一郎]