精神衛生(読み)セイシンエイセイ

デジタル大辞泉 「精神衛生」の意味・読み・例文・類語

せいしん‐えいせい〔‐ヱイセイ〕【精神衛生】

精神障害予防や保護・治療のほか、精神的健康の維持促進を目的とする学問、およびそのための実践活動。精神保健

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精選版 日本国語大辞典 「精神衛生」の意味・読み・例文・類語

せいしん‐えいせい‥ヱイセイ【精神衛生】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 精神的健康者の健康保持と精神的疾患にかかるおそれのある人々の罹患予防など、広く精神の健康を維持し、改善するための活動を含む公衆衛生の一分野。〔精神衛生法(1950)〕
  3. (一般に)精神が安らかに保たれること。
    1. [初出の実例]「いったん夫の愛情がはっきり言葉で確認されれば、〈略〉実に精神衛生によいんだそうです」(出典:新西洋事情(1975)〈深田祐介〉舶来女房、愛すべし)

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改訂新版 世界大百科事典 「精神衛生」の意味・わかりやすい解説

精神衛生 (せいしんえいせい)

精神衛生mental hygieneとは,広義には精神的健康mental healthを保ち増進すること,すなわち精神保健であるが,狭義には精神障害にならないように予防すること(第1次予防,発生予防),なった場合も早期発見,早期治療,再発予防をすること(第2次予防,有病率低下),そしてリハビリテーションを促進して精神的健康を回復すること(第3次予防,社会復帰)を指している。精神的健康とは精神障害がなく,個人が社会の中で良好な適応状態にあることであるが,社会文化的価値基準や個人的事情の違いによって相対的な面がある。

 近世以降の精神衛生活動をみると,18世紀末フランスのピネルは,ビセートル病院の精神障害者を拘束から解放し人道的に扱う方向を開いた。このような狭義の精神衛生の実践はイギリスのコノリーJ.ConollyやドイツのジーモンH.Simonに受け継がれた。一方,精神保健の推進運動はアメリカで盛んであり,ビアーズはみずからの体験をもとに著書《わが魂に会うまで》(1908)を発行し,コネティカット精神衛生協会を設立した。A.マイヤーやW.ジェームズ,G.S.ホールらもこれを援助した。1930年にはワシントンで第1回国際精神衛生会議が開かれ,第2次大戦後の48年にはロンドン世界精神衛生連盟の第1回総会が開かれ現在に至っている。世界保健機構の精神衛生部でも種々の国際的活動を行っている。

 日本では11世紀末から京都の岩倉村で患者の共同生活が行われていたが(岩倉保養所),近代以降の活動としては1902年呉秀三精神病者救治会をつくったのをはじめとして,26年には日本精神衛生会,52年には日本精神衛生連盟が結成された。国の施策では,1900年精神病者監護法により監護義務者を定め,19年精神病院法により精神病院と入院の規定をした。また50年には精神衛生法(現精神保健福祉法)により私宅監置を禁止し,措置入院同意入院,精神衛生鑑定医などを制度化した。さらに65年の同法改正により,精神衛生センター設置や通院医療費公費負担制度を発足させた。

 精神衛生の領域は人間生活の時期的・縦断的側面と状況的・横断的側面からとらえうる。前者では,(1)胎生・出生期の遺伝・先天性疾患や母体障害,妊娠・分娩,(2)乳幼児期の精神発達とその遅滞,育児・しつけなどの母子関係,(3)学童期と(4)思春期・青年期の発達,教育のことで,登校拒否,家庭内暴力,校内暴力,非行,摂食障害,性的発達,自殺,(5)成人期の婚姻・育児・家事や職業上の不適応,離婚,アルコール依存,(6)初老期の成人病,心身症,抑うつ状態,(7)老年期の生活設計,身体病,認知症などや世代隔差の問題などが注目される。後者には,(1)家庭での親子・夫婦・同胞関係,(2)学校での進学,勉学,課外活動,師弟関係,(3)職場での就職,適性,事故,欠勤,転勤,転職,定年,(4)地域社会での環境や近隣関係などの問題がある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「精神衛生」の意味・わかりやすい解説

精神衛生
せいしんえいせい
mental hygiene; mental health

精神障害の予防およびアフターケアと,人々が安定した精神生活をおくれるように取計らうことの2つの意味がある。前者は長い間 mental hygieneと呼ばれていた。これには精神障害の発生率を減少させること,早期発見により有病率を減少させること,社会復帰を促進することの3段階がある。一方,後者の安定した精神生活については,19世紀末以降の産業社会化が精神面に強い影響を与えたことから取上げられるようになった。犯罪,非行,アルコール乱用,自殺などがおもな課題になる。また,精神衛生活動の対象別に,乳幼児精神衛生,青少年精神衛生,老人精神衛生,家族精神衛生,産業精神衛生,地域社会精神衛生などとも呼ばれる。世界精神衛生連盟は 1948年,日本精神衛生連盟は 52年に結成された。精神障害者の救済を目的とするボランティア組織としては 02年に精神病者救治会が結成され,世界でも最も古い歴史をもっている。

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百科事典マイペディア 「精神衛生」の意味・わかりやすい解説

精神衛生【せいしんえいせい】

精神の健康の増進,すなわち精神保健と,精神障害の予防・対策の実践の総体。精神医学を中心に心理学,社会学,法律学,経済学,人類学,生物学等の諸科学が活用される。精神医学の社会的応用の一つと考えられ,日本では国立精神保健研究所などで研究がなされている。

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栄養・生化学辞典 「精神衛生」の解説

精神衛生

 精神面の健康に関する衛生.

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