改訂新版 世界大百科事典 「糖アルコール」の意味・わかりやすい解説
糖アルコール (とうアルコール)
sugar-alcohol
高等植物や海藻,地衣類に広く分布する低分子生体物質。糖分子のカルボニル基が還元され,水酸基になることにより得られる鎖式多価アルコールの総称。糖とは異なり,フェーリング液を還元せず,変旋光を示さない。一般に水,アルコールによく溶け,甘味をもつ。水酸基の数によってエリトリット(4価),ペンチット(5価),ヘキシット(6価)等と呼ばれる。グリセリンは3価アルコールであり,脂質,リン脂質の成分として生物界に広く存在している。ペンチットであるアドニット(アドニトール)は遊離型でも存在するが,ビタミン,補酵素の一種であるFMN(フラビンモノヌクレオチド)やFAD(フラビンアデニンジヌクレオチド)の成分として存在する。
また,ヘキシットであるマンニット(マンニトール)は,マンナ(植物の茎にある糖を含む分泌液)の主成分である。同じくヘキシットであるズルシット(ズルシトール)は,水に難溶で,糖尿病患者の甘味料として用いられる。
執筆者:柳田 充弘
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報