糖尿病とは診断できないものの、糖尿病を発症する可能性が高く、糖尿病への進展過程にあると考えられる人の総称。「糖尿病予備軍」と表記されることもある。
糖尿病は血糖値の高い状態が慢性的に持続していることを証明することによって診断され、その際の指標として血糖値とHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の値が用いられる。診断の過程として、(1)早朝空腹時血糖値126mg/dL以上、(2)75グラム経口ブドウ糖負荷試験(75グラムのブドウ糖を含む液を飲み、30分ごとに2時間後までの血糖値の変化を調べる検査)2時間値200mg/dL以上、(3)随時血糖値200mg/dL以上、(4)HbA1c6.5%以上、のいずれかが確認された場合には「糖尿病型」と判定され、一方、(5)早朝空腹時血糖値110mg/dL未満かつ、(6)75グラム経口ブドウ糖負荷試験2時間値140mg/dL未満である場合は「正常型」と判定される。(1)~(3)のいずれかに加え、同日に(4)が確認された場合などに糖尿病と診断されるが、糖尿病型および正常型のいずれにも属さない場合は「境界型」と判定される。境界型と判定された人が、一般に「糖尿病予備群(軍)」とよばれる。
糖尿病(2型糖尿病)は通常、突然発症するのではなく、不適切な生活習慣を基盤として徐々に血糖値が上昇し、境界型の段階を経て発症することが知られている。境界型と判定された人が糖尿病に至る率は正常型の人に比して高く、また、高血圧や脂質異常症、高尿酸血症などの他疾患を併発しやすいことから、心筋梗塞(こうそく)や動脈硬化性疾患などを生じるリスクも高くなる。これらを予防するには、肥満の是正や運動不足の解消など、生活習慣の見直しが有用であるとされ、境界型から正常型に移行することもありうる。
なお、健康増進法に基づき厚生労働省が毎年実施している「国民健康・栄養調査」においては、4~5年に一度の割合で「糖尿病に関する状況」について全国調査が行われており、この調査においては、20歳以上でHbA1cの測定値がある者のうち、HbA1cが6.5%以上または「糖尿病治療の有無」に「有」と回答した者を「糖尿病が強く疑われる者」とし、HbA1cが6.0%以上6.5%未満の者を「糖尿病の可能性を否定できない者」として、後者をいわゆる「糖尿病予備群」としている。
なお2016年(平成28)の調査では、「糖尿病が強く疑われる者」は約1000万人と推計され、1997年(平成9)調査以降増加している。「糖尿病の可能性を否定できない者」も約1000万人と推計され、1997年調査以降増加していたが、2007年をピークに減少に転じている。
[編集部 2018年3月19日]
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