納税者番号制度(読み)ノウゼイシャバンゴウセイド

デジタル大辞泉 「納税者番号制度」の意味・読み・例文・類語

のうぜいしゃばんごう‐せいど〔ナフゼイシヤバンガウ‐〕【納税者番号制度】

納税者に固有の番号を付与し、所得や資産を把握する仕組み。課税の公正化・効率化を図れる一方、個人情報の漏出やプライバシーの侵害が懸念される。→マイナンバー
[補説]米国やカナダなどは社会保障番号、北欧・韓国・シンガポールなどは出生時に全国民に付与される識別番号を利用。ドイツイタリアオーストラリアなどは税務専用の番号制度を設けている。日本では、平成28年(2016)からマイナンバー制度導入されたが、各税務署が納税者に割り当てる整理番号をマイナンバーとひもづけることで情報を管理している(令和6年3月現在)。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「納税者番号制度」の意味・わかりやすい解説

納税者番号制度
のうぜいしゃばんごうせいど

すべての納税者に一意の番号を付与し,経済取引や税務当局への申告における利用を義務づけることで,税務当局が各納税者の課税資料を集中的に管理する制度。個人や企業などの所得を正確に捕捉して公平に課税することや,税務行政を効率化することなどを目的とする。付番機関が納税者に番号を交付するとともに税務当局に番号データを提供し,税務当局は納税者から提出される申告書と取り引きの相手方から提出される申告書を納税者番号に基づいてコンピュータ処理で名寄せし,記載内容を突き合わせて,申告書の内容の適否を判断する。アメリカ合衆国は 1962年から社会保障番号を,カナダは 1967年から社会保険番号を税務に活用しており,北ヨーロッパのスウェーデンデンマークフィンランド大韓民国(韓国)は 1960年代から住民登録番号を税務に用いている。またイギリスでは源泉徴収など一部の税務にかぎって国民保険番号が使われている。納税者番号は,1977年からイタリア,1989年からオーストラリア,2009年からドイツが利用している。日本でも 1980年頃から税制調査会などで導入が検討され始め,2013年に社会保障と災害対策での利用も含めた社会保障・税番号制度(マイナンバー制度)の関連法が成立した。国民に番号を付与し一元管理することについては,国家による統制強化や,個人情報の漏洩によるプライバシーの侵害なども懸念されている。

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改訂新版 世界大百科事典 「納税者番号制度」の意味・わかりやすい解説

納税者番号制度 (のうぜいしゃばんごうせいど)
taxpayer account number system

各納税者(個人,法人)に番号をつけ,その番号によって各納税者に関する資料を収集し,その所得を集計する制度。たとえば,納税者は,預金口座を開設する際にその納税者番号を金融機関に通知しなければならず,金融機関は,税務署に提出する支払調書に利子支払の相手方の氏名のみでなく,その納税者番号をも記入しなければならないこととすれば,たとえ預金がペンネームや架空名義で行われていても,税務行政庁は支払調書を納税者番号によって整理することにより,だれにどれだけの預金があり,またどれだけの利子所得があるかを正確に把握することができる。そのため,この制度は,脱税を防止し,所得を正確に把握するために大きな効用を発揮しうる。この制度は,アメリカでは,1961年から行われており,社会保険番号が納税者番号として用いられている。納税者番号制度は,ほかに,カナダ,オーストラリア,北欧諸国,イタリアでも採用されており,日本でも所得の正確な把握のために採用すべきかどうかが問題となっている。
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知恵蔵 「納税者番号制度」の解説

納税者番号制度

「骨太の方針2007」(2007年6月19日閣議決定)は、税体系の抜本的改革を実現すると指摘している。同方針はこの中で徴収体制について、(1)納税者番号の導入に向けて、社会保障番号との関係の整理等を含め具体的な検討を進める、(2)税制を簡素化するとともに、電子申告を促進し、徴収方法を効率化する、と述べている。すでに国税庁は01年、個人、法人、各種団体の税務に関して集めた資料をコンピューターで管理するKSK(国税総合管理)システムを全国の税務署で実施することを完了している。このシステムによって全国の国税局や税務署は集めた情報をボタン1つで呼び出すことができる。国税庁は、国税電子申告・納税システム(e-Tax<イータックス>)を当面の最重要課題としている。電子申告制度は納税者番号制度を導入する準備の役割をしている。納税者に番号を付す納税者番号制度の法制化は国民のプライバシーの権利(憲法第13条)を侵すのではないかという問題が生ずる。

(浦野広明 立正大学教授・税理士 / 2008年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディア 「納税者番号制度」の意味・わかりやすい解説

納税者番号制度【のうぜいしゃばんごうせいど】

すべての納税者(個人,法人)に番号を付け,個人課税所得を正確に把握するための制度。納税者などが税務署などに提出すべき書類にはこれを記することを義務づけ,各納税者に関する資料をその番号によって管理する。現時点では,一般的認知度の低さ,システム構築のコスト,個人プライバシー保護などの問題がある。米国では1961年以来,社会保障番号と共通のものが導入されている。日本では類似のものがグリーンカード制度として検討された。

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世界大百科事典(旧版)内の納税者番号制度の言及

【利子・配当課税】より

…給与所得なら最高で75%の累進税率がかけられるのに,利子・配当なら最高でも35%ですむのは,不公平税制の典型ではないか,という批判である。この批判にこたえて総合課税に移行するためには,アメリカで採用されている納税者番号制度が最も有効とされ,日本でもグリーンカード(少額貯蓄等利用者カード)制の導入が図られたことがあった。 その後1987年の改正により,少額預貯金の利子の非課税制度が原則的に廃止(老人等に係る利子所得については非課税)され,利子課税制度の見直しがなされた。…

※「納税者番号制度」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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