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純粋小説 じゅんすいしょうせつroman pure

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

純粋小説
じゅんすいしょうせつ
roman pure

フランスの小説家アンドレ・ジッドが追求し,『贋金つかい』 (1926) でその方法論を具体化した小説の理念。バレリー純粋詩の概念から発想を得たものとされ,小説を純粋な芸術作品と考え,小説と関係のない要素をすべて取去ることで純粋性を目指した。日本では,ジッドにヒントを得て横光利一が『純粋小説論』 (35) を発表した。

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世界大百科事典 第2版の解説

じゅんすいしょうせつ【純粋小説 roman pur】

A.ジッドがその唯一の小説(ロマン)《贋金づくり》(1926)において実現を目指したもの。その考えによれば,小説から,小説的でないいっさいの要素,小説にとっては二義的な意味しか持ちえぬいっさいの要素を,極力排除しなければならぬ。このような不純要素とは他の芸術ジャンルでも実現しうるものだからである。たとえば,写真術の発達が絵画をいわゆる写実性から解放したように,蓄音機の普及が在来の小説の克明な会話などを無用とするだろう。

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大辞林 第三版の解説

じゅんすいしょうせつ【純粋小説】

小説の中から非小説的要素を取り除いた小説。ジードが「贋金づくり」で主張・実践。日本では横光利一の「純粋小説論」がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

純粋小説
じゅんすいしょうせつ
le roman purフランス語

フランスの作家アンドレ・ジッドの作品『贋金(にせがね)つかい』(1926)のなかで、作中人物の一人である小説家エドワールが、自分の構想する作品に与えた呼称。自作の制作過程をさらけ出した『贋金つかいの日記』(1926)では、ジッド自身のことばで、純粋小説の理念が説明されている。エドワールは作者ジッドの分身なのである。小説から小説に属さないすべての要素を排除する、というのが、純粋小説についてジッドが抱いていた基本的考えであり、具体的には、小説家は神の視点をとるべきではない、ということである。のちにサルトルはモーリヤック批判をしたなかで、神の視点を小説家の視点とすることに反対したが、これはそれを先取りした議論といえよう。前記『日記』のなかの「去り行く者は、その背中しか見えないことに留意せよ」ということばは、『贋金つかい』で忠実に守られており、この小説の各章は、そこに登場する人物のだれか一人の視点を借りて展開していく。この小説だけをジッドがロマンとよんだのは、それがもっとも純粋小説に近い小説である、と考えていたからではあるまいか。
 日本では、ジッドに示唆を受けた横光利一(よこみつりいち)が1935年(昭和10)に『純粋小説論』を発表したが、それは横光独自の理論であった。彼は、私小説の平板さに対して、「自分を見る自分」という第四人称を設定して、通俗小説の大衆性と娯楽性、純文学の内面性と思想性とをあわせもつ、おもしろい小説の創造を主張した。『家族会議』(1935)はその実験作であるといえよう。[白井浩司]

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