紫外線を応用した光線療法の一つ。医療に応用されているのは波長が300ナノメートル前後の紫外線で、その発生源としては太陽灯が用いられている。
紫外線を人体に照射すると、皮膚表層のタンパク質が変性し、ヒスタミン様の血管拡張作用をもつ物質が放出されるため、数時間後に紅斑(こうはん)を生ずる。その結果、真皮が肥厚してメラニン顆粒(かりゅう)が皮膚表層に移動し、数日後に色素沈着を生ずる。この色素沈着によって紫外線が吸収され、紅斑をおこしにくくなる。つまり、紫外線に対する慣れであるが、照射が強すぎると、紅斑を通り越して水疱(すいほう)(水ぶくれ)を生ずる。すなわち、火傷(やけど)をおこす。また、目の場合には数時間後に角膜炎をおこすので、黄色または緑色の保護眼鏡(サングラス)を用いて予防する。このように紫外線は、生体に対して透過力が少なくせいぜい1ミリメートル程度であり、作用を受けるのは表面の皮膚と目などに限られるが、破壊的な作用をもつので注意が必要である。
紫外線はまた、エルゴステロールなどのステロールを異性化させてビタミンDを形成する作用があり、くる病に対抗する効果がある。牛乳などに照射しても、ビタミンDができる。さらに全身作用として血圧や血糖を低下させ、白血球や赤血球を増加させる。したがって、肺外結核(骨、関節、皮膚など)をはじめ、くる病や貧血症などに使われたが、現在では化学療法の適用となり、一部の皮膚疾患や核黄疸(おうだん)に対する治療以外はほとんど応用されていない。
なお、光線療法は物理療法の一つで、紫外線療法のほか、温熱作用を利用する赤外線療法や、紫外線・可視光線・赤外線などを利用する日光療法(日光浴)などを含む。
[小嶋碩夫]
…広く光,熱,水,電気,および機械的なものなど物理的な作用を利用する治療法をいう。(1)光線の利用 230~5000μmの波長を有する電磁波エネルギーを用いるもので,紫外線療法と赤外線療法がある。紫外線療法は紫外線の殺菌作用や生体に対する刺激作用を利用し,赤外線療法は赤外線の温熱作用を利用する。…
※「紫外線療法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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