患者から採取した細胞を培養し、シート状に接着・凝集化させて作製した細胞集合体。機能しなくなった患部に移植して再生を促す再生医療に用いられる。これまで行われてきた注射やカテーテルで細胞を注入する移植法に比べて拒絶反応がおこらず、移植細胞が確実に患部に定着するため、治療効果が飛躍的に高まる。
いちど機能を失ったヒトの臓器が元に戻るには、これまで臓器移植以外に方法はなかった。しかし、臓器移植にまつわる脳死判定などの倫理的問題も完全に払拭(ふっしょく)されたわけではなく、また、臓器を提供するドナーもなかなかみつからないのが実情である。そこで考えだされたのが人工臓器にも応用可能な細胞シートを移植する方法であった。基本的には患者自身から採取した細胞をシャーレで培養して細胞シートを作成し、それを目的の部位に貼(は)るという、施術としては簡易な治療法である。日本をはじめ諸外国でも、角膜や心筋などを対象にした臨床応用研究が盛んに行われている。
日本ではすでに眼科領域において臨床応用が進み、患者自身の細胞を使って培養した細胞シートを移植する角膜治療は、拒絶反応が少なく効果の持続する予後良好な治療法として高い評価を得ている。また循環器領域においては、すでに動物実験において筋芽細胞シートが心筋組織再生に効果があることが立証されており、おもに拡張型心筋症の患者に対する臨床研究が進められている。この治療法が確立されれば、心筋梗塞(こうそく)をはじめとする虚血性心疾患や重度の心筋症など、これまで臓器移植以外に回復が望めなかった心疾患も、壊死(えし)に陥った部位に細胞シートを移植することで機能の回復が見込めるようになると期待されている。さらに加齢などで軟骨がすり減り、痛みを伴う変形性関節症などについても、人工関節にかわるものとして臨床応用研究が始まっている。
[編集部]
(石川れい子 ライター / 2014年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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