心筋症(読み)しんきんしょう(英語表記)cardiomyopathy

  • (子どもの病気)
  • (循環器の病気)
  • しんきんしょう〔シヤウ〕
  • 心筋症 cardiomyopathy
  • 心筋症(循環器疾患と遺伝子異常)
  • 心筋症(心筋疾患)

翻訳|cardiomyopathy

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

心筋疾患総称で,特発性と続発性とがある。特発性心筋症はうっ血性 (拡張型) と肥大性に分けられ,ごくまれに収縮性のものがある。 20~40歳代の男性に多い。同一家系内に発生することがある。原因は不明である。心悸亢進呼吸困難胸痛,不整めまい浮腫などを訴え,心肥大がみられる。続発性心筋症は,心筋炎筋ジストロフィー膠原病サルコイドーシスアミロイドーシス代謝異常などに続発する。

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デジタル大辞泉の解説

心臓を動かす筋肉に異常が発生し、心機能の低下をきたす疾患。心筋の細胞が肥大・変質するなどして、心臓から全身に血液を送り出すポンプ機能が低下し、動悸(どうき)・息切れ・呼吸困難などの症状が起こる。心筋が厚くなる肥大型心筋症、心筋が薄くなる拡張型心筋症、心筋が硬くなる拘束型心筋症などがある。
[補説]心筋疾患のうち、原因が特定されていない特発性のものが心筋症とされ、原因または全身疾患との関連が明らかになっているもの(特定心筋症)とは区別される。

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百科事典マイペディアの解説

心筋を冒し心臓肥大,心臓拡大をもたらす疾患の総称。原因不明のものを特発性心筋症といい,心筋症という場合,多くはこれである。心筋細胞が異常に肥大し,そのため心室内腔が狭小化し心室への血液流入が阻害される肥大型心筋症と,心筋の変性が著しく心室筋の収縮不全が生じて心臓が拡大し鬱血(うつけつ)性の心不全症状を呈することの多い拡張型心筋症とが主なものである。いずれも心電図で発見されることが多い。治療は対症療法。
→関連項目突然死

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世界大百科事典 第2版の解説

心筋を侵し心臓拡大,心臓肥大をきたす疾患の総称。原因不明のものを特発性心筋症idiopathic cardiomyopathy,診断がついた全身性疾患との関連が明らかなものを特殊な心筋疾患(従来,続発性心筋症といわれていた)と呼ぶ。しかし後者は全身性疾患名を用いればよいので,多くの場合,心筋症という言葉は特発性心筋症を指していう。本疾患は日本では比較的若年の20~40歳代に発症し,全心臓疾患の3~15%と必ずしもまれな疾患でないこと,原因不明とはいうものの家族性に発症したり,感冒様症状から発病してくる場合があること,さらに急死の原因になることなどから,注目されている疾患である。

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大辞林 第三版の解説

心筋に病変を有する疾患の総称。ただし、虚血性心疾患・心臓弁膜症・肺性心など、病因の明らかなものを除く。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

心筋に肥大、変性、壊死(えし)、線維化などの変化がおこり、機能障害を発現する疾患群を総称する。原因の明らかでない原発性心筋症と、明らかな基礎疾患に続発して発症する続発性心筋症の2群に大別される。ただし、先天性心疾患、肺性心、心臓弁膜症、高血圧性心疾患、虚血性心疾患および特異的炎症性疾患により生じた心筋疾患は、ここでいう心筋症には含めない。[井上通敏]

原発性心筋症

特発性心筋症(肥大型心筋症とうっ血型心筋症)をはじめ、心内膜弾性線維症、心内膜心筋線維症、アルコール性心筋症、産褥(さんじょく)性心筋症などがある。一般に心筋症では肥大型心筋症など一部を除いてうっ血性心不全症状を呈することが多く、その場合は強心剤、利尿剤などによる治療が行われる。アルコール性では断酒が有効である。予後は、うっ血型心筋症では不良であり、産褥性心筋症では多くが回復するものの、3分の1に心電図異常や心肥大などの後遺症を残す。[井上通敏]

続発性心筋症

多様な疾患がその原因として知られているが、おもなものとしては心筋炎をはじめ、神経・筋疾患のフリードライヒ病(運動失調症の一つ)や進行性筋ジストロフィー、膠原(こうげん)病の強皮症、皮膚筋炎、全身性エリテマトーデス、代謝性疾患のアミロイドーシス、粘液水腫(すいしゅ)、甲状腺(せん)機能亢進(こうしん)症、糖原病、ハーラー症候群などのほか、尿毒症、サルコイドーシス、脚気(かっけ)、心臓腫瘍(しゅよう)、中毒などによるものがある。原疾患の治療が重要であり、脚気によるものにはビタミンB1の大量投与が奏効する。予後は原疾患によるが、進行性筋ジストロフィーやサルコイドーシスなど一部の疾患では、その死因として心筋障害による心不全など、心臓の病変が高頻度に認められる。[井上通敏]

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内科学 第10版の解説

 かつて「原因不明の心筋疾患」と定義されていた心筋症であるが,原因遺伝子変異の同定が進み,この定義は過去のものとなった.2006年のアメリカ心臓協会の心筋症分類(Maronら, 2006)では,心筋症は遺伝性,混合性(遺伝性と後天性),後天性に分類されており,心筋症の病因において遺伝子異常は大きなウエイトを占めるに至っている. 肥大型心筋症(HCM)では約60%,拡張型心筋症(DCM)では約30%の症例に原因遺伝子変異が同定される.多くは常染色体優性遺伝形式をとる.1990年,HCMの大家系に心筋ミオシン重鎖遺伝子変異が同定されて以来,連鎖解析により心筋トロポニンT,αトロポミオシン,心筋ミオシン結合蛋白Cなどサルコメア蛋白の遺伝子変異が次々に報告され,当初は「HCM=サルコメア病」と考えられた.現在でも,サルコメアの異常がHCMをきたす主たる原因であることは間違いない.しかし,サルコメアの遺伝子異常はHCMにとどまらず,DCM,拘束型心筋症(RCM),左室心筋緻密化障害(LVNC),周産期心筋症などほかの心筋症の原因でもあることがわかっている.
(1)肥大型心筋症
(hypertrophic cardiomyopathy: HCM)(表5-4-2) 心筋の肥大,拡張障害,心筋細胞の肥大,錯綜配列,間質線維化を特徴とする.人口500人あたり1人程度と頻度が高く,循環器領域における遺伝性疾患として最多である.無症状から,流出路圧較差をきたす重症のものまで臨床徴候は多岐にわたる.若年者心臓突然死の原因の第一位である.約10%の症例では経過中に拡張型心筋症様になり難治性心不全をきたす(拡張相肥大型心筋症). 約60%の症例に原因遺伝子変異が同定されている.現在までに1000種類以上のサルコメア蛋白遺伝子変異が報告されている.常染色体優性遺伝形式をとり,ヘテロ型で発症する.心筋ミオシン重鎖遺伝子(MYH7),心筋ミオシン結合蛋白C遺伝子(MYBPC3),ついで心筋トロポニンT遺伝子(TNNT2)に変異が同定されることが多い.1人の祖先から代々受け継がれ広く分布するようなfounder変異は少なく,1家系だけにみられるprivate変異が多い.これが遺伝子診断の実践を困難にしている一因である.家族性ではなく,孤発する(sporadic)症例にも遺伝子変異が同定されることが多いが,これは,①親からの遺伝ではなくその個人に新規(de novo)に発生した変異による場合,または②親も同じ変異を保有しているが親には発症せず,その個人でのみ発症に至る場合(変異の浸透率が低い),にみられる.
 サルコメア遺伝子変異がHCMをきたす機序に関して検討が進められている.サルコメア蛋白遺伝子にみられる原因変異のほとんどはミスセンスないしは小欠失である.コードされた変異蛋白は安定的に心筋線維に取り込まれ,サルコメア機能の障害をきたす.単離した変異ミオシン分子を用いた解析では,ATPase活性は亢進,発生する力は大きくなり,アクチンフィラメントのスライディングは速くなる.これらの変化はHCM早期にみられる収縮亢進状態をよく説明する.stiff sarcomere,ストレッチ反応の亢進,Caイオン感受性亢進が病態に関与するという説が提唱されている.心肥大発症前の早期段階から心筋間質で線維化反応が活性化し病態形成に重要な役割を果たすこともわかってきた.
 「同じ変異を保有していても臨床徴候には個人差がある」ことに注意が必要である.併存する遺伝要因(genetic modifier)ないしはおかれた環境の違いによると考えられる.しかし,心肥大の重症度やパターン,発症年齢は変異の種類によりある程度類型化できる.late-onsetのHCMにはMYBPC3変異によるものが多い,TNNT2変異では心肥大が軽度である割には突然死が多い,ACTC Glu101Lys変異は心尖部肥厚型が多い,などが報告されている. サルコメア蛋白遺伝子以外にもHCM原因変異が同定されているが頻度は低い.
(2)拡張型心筋症(dilated cardiomyopathy: DCM)(表5-4-3)
 心筋収縮障害,心室内腔拡張,心筋細胞脱落と間質線維化を特徴とする.難治性心不全や不整脈をきたす予後不良の疾患である.連鎖解析,候補遺伝子アプローチを用いて多くの原因遺伝子変異が同定されてきた.サルコメア蛋白だけではなく,Z線蛋白,介在板蛋白,中間径フィラメントやジストロフィン関連糖蛋白複合体,核膜構成蛋白などサルコメアで発生した力を伝達する構造物,Caイオンをはじめとするイオンサイクリング系に関与する蛋白,転写制御因子などきわめて多岐にわたる.「力発生障害」「力伝達障害」をキーワードに病態の説明が可能である.loose sarcomere,ストレッチ反応低下,Caイオン感受性低下,代謝ストレス障害が病態に関与しているという説が提唱されている.
(3)拘束型心筋症(restrictive cardiomyopathy:RCM)
 心室充満の障害と拡張容量減少を特徴とするまれな心筋疾患である.右心不全あるいは両心不全をきたす.心室壁厚と収縮能は正常に保たれる.トロポニンI(TNNI3)遺伝子変異が特発性RCMの原因として報告されている.
(4)グリコーゲン貯留性心筋症および心Fabry病
 グリコーゲン貯留性疾患は心肥大を主徴とする心筋症をきたす.骨格筋病変を伴うケースは診断がつきやすいが,心筋症単独症例ではHCMと診断されがちである.心筋生検での心筋細胞の空胞変性,空胞内のグリコーゲン貯留(PAS染色)所見をもって正確な診断に至ることが多い.HCMとは異なり,心筋細胞の錯綜配列は少なく,間質線維化も有意でない.WPW症候群様の刺激伝導障害をきたす.成人において特に問題になるのはAMP キナーゼのγ2サブユニットをコードするPRKAG2の変異(AMP キナーゼの持続的活性化をきたす)である.常染色体優性遺伝形式をとる.
 心Fabry病は心臓限局性のスフィンゴ脂質蓄積症である.全身性のFabry病がα-ガラクトシダーゼA活性の完全欠損によって起こるまれな疾患(約12万人に1人)であるのに対し,心Fabry病はα-ガラクトシダーゼA活性の部分欠損によって起こり,決してまれな疾患ではない.わが国では心肥大男性症例の3%程度にみられることが明らかにされている.α-ガラクトシダーゼの補充により心肥大の改善をみるので,本症はほかの心肥大と明確に鑑別して治療にあたる必要がある.全身性のFabry病,心Fabry病の原因としてα-ガラクトシダーゼA遺伝子(GLA)の変異が多数報告されている.X染色体劣性遺伝形式をとる.
(5)不整脈源性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy: ARVC
 右室心筋細胞の脱落,脂肪変性,細胞浸潤と線維化により右室拡大,壁運動低下および左室ブロック型心室頻拍をきたす心筋疾患.頻度は5000人に1人,30〜50%が家族性,若年者突然死原因の20%を占めるとされる.細胞接着に関与するデスモソーム構成蛋白の遺伝子異常による.その他,心リアノジン受容体遺伝子(RyR2)変異の報告もある.
(6)左室心筋緻密化障害
 心室壁の過剰な網目状肉柱形成と深い間隙(trabe­culation)を特徴とする,収縮力低下と拡張した肥厚左室(緻密層菲薄化)を呈する心筋症.心不全,血栓症,不整脈,突然死をきたす.tafazzin,α-ジストロブレビン(ジストロフィン関連蛋白),Cyper/ZASP(Z線関連蛋白),サルコメア蛋白などの遺伝子変異が原因として報告されている.
(7)遺伝子解析の注意点と課題
 「原因遺伝子は何か」ではなく,「原因遺伝子変異は何か」という視点が必要である.たとえば,タイチン遺伝子はDCMおよびHCMの原因遺伝子であるが,おのおのの原因となる遺伝子変異は別箇である.すなわち,「この変異はDCMをきたすが,別の変異はHCMをきたす」というとらえ方が必要である.別の例をあげる.SCN5A変異は先天性QT延長症候群3型(LQT3),Brugada症候群の原因として知られるが,SCN5Aの別の変異は拡張型心筋症の原因として知られるなど変異の部位によって引き起こされる病態が異なる.心筋症の分類は現在形態的分類が主流であるが,遺伝子解析が今後さらに進めばそれに基づいた遺伝病因学的分類を行うことが可能になる.次世代型シークエンサーによる遺伝子解析の効率化が期待される.ただし,ゲノム情報が詳細にわかっても,正確な臨床情報と統合してgenotype-phenotype連関を確立しないと,ゲノム解析の成果を遺伝子診断に活かすことはできない.臨床情報の丹念なファイリングが不可欠である.
(8)遺伝子診断の現状と課題
 心筋症における遺伝子診断は,診断確定に貢献するものの,心Fabry病など一部の疾患を除いて,現時点で治療選択に直結することは少ない.しかしながら,原因遺伝子変異同定に始まる病態解明は将来の診断法改良,治療開発に貢献することが期待される.また,遺伝子解析を進めると,未発症例に遺伝子変異が検出されることもまれではない.このような遺伝子変異陽性未発症例に対して発症前から何らかの早期治療(介入)を行えば発症を遅らせることができるのか,予防できるのか,また発症したとしても予後を改善させうるのか,ヒトではいまだエビデンスが得られていない.
 遺伝子検査を行う際には日本医学会ガイドライン(日本医学会, 2011)を遵守し,検査前に必ず文書によるインフォームドコンセントを得る必要がある.家族性心筋症が疑われる場合,患者の血縁者は患者と同じ変異を有している可能性がある.血縁者がその変異を有していないことが遺伝子検査で確認されれば,生涯にわたる不必要な定期検診(心電図,心エコー検査)の反復や運動制限を避けることができる.遺伝子検査の結果解釈や患者への説明に関しては,遺伝カウンセラーや専門医への事前コンサルトが勧められる.[森田啓行]
■文献
Maron BJ, Towbin JA, et al: Contemporary definitions and classification of the cardiomyopathies. Circulation, 113: 1807-1816, 2006.
日本医学会:医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン (2011).http://jams.med.or.jp/guideline/genetics-diagnosis.pdf
分類
 心筋症の分類にはさまざまなものがあるが,代表的なWHO/ISFC(WHO:World Health Organization,ISFC:International Society and Federation Cardiology)の1995年委員会報告書では心筋症は「心機能障害を伴う心筋疾患」と定義され拡張型(dilated),肥大型(hypertrophic),拘束型(restrictive),不整脈源性右室心筋症(arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy)と分類不能の心筋症(unclassified cardiomyopathy) に分類されている.さらに,原因または全身疾患との関連が明らかな心筋疾患は“特定心筋疾患”として区別される.またわが国の2005年「心筋症,診断の手引きとその解説」では心筋症は①拡張型心筋症,②肥大型心筋症,③拘束型心筋症,④不整脈源性右室心筋症,⑤家族性突然死症候群,⑥ミトコンドリア心筋症,⑦心Fabry病,⑧たこつぼ心筋障害に分類されている.一方,AHA(米国心臓協会)はそのステートメントで心筋のみあるいはおもに心筋に病変が限られるprimary(一次性)と全身疾患の一部として心筋が含まれるsecondary(二次性)に分け,primaryをさらにgenetic(遺伝性), mixed(混合性), acquired(後天性)に分類することを提唱している.[百村伸一・和田 浩]
■文献
友池仁暢,他:拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン,日本循環器学会.http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2011_tomoike_h.pdf
厚生労働省難治性疾患克服事業 特発性心筋症調査研究班:心筋症,診断の手引きとその解説(北畠顕他編),かりん舎,札幌, 2005.
McKenna WJ, et al: Report of the 1995 World Health Organization/International Society and Federation of Cardiology task force on the definition and classification of cardiomyopathies. Circulation, 93: 841, 1996.

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 心筋症とは、心臓の機能異常を伴う原因不明の心筋(心臓の筋肉)の病気で、主なものに肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型(こうそくがた)心筋症があります。(図17)にそれぞれの心筋症の特徴を示しました。

 診断は、心電図の変化や心エコーなどの画像診断、心臓カテーテル検査、心筋生検(心筋の組織の一部を採取して検査)などで行います。

①肥大型心筋症

 心筋が非対称的に肥大する病気です。筋肉が肥大すると収縮する力は保たれますが、筋肉が厚いので伸びなくなって拡張が困難になります。約半数に家族歴があり、最近、その人たちのなかで心筋を構成する遺伝子の異常が報告されています。また、心室中隔(ちゅうかく)が肥大して左心室から大動脈への通路が狭くなったり、僧帽弁(そうぼうべん)がきちんと閉まらなくなって血液の逆流がみられることもあります。

 症状は、疲れやすい、運動時の息切れ、胸痛、胸部不快感、失神、めまいなどのほか、不整脈がみられることがあります。一方、無症状で心電図の異常や心雑音から偶然発見されることもあります。

 予後は、他の心筋症より比較的良好ですが、突然死があり、突然死の家族歴や失神の前歴、心室性不整脈などとの関連が示唆されています。また、徐々に心臓が大きくなり、後述する拡張型心筋症のように収縮能が低下して心不全が増強する場合も予後は不良で、心臓移植の適応となることがあります。

 本症と診断された場合は、血行動態を悪化させないように激しい運動はひかえる必要があります。また、症状がある場合には、その程度に応じて薬物療法や肥大した心筋による狭窄(きょうさく)を解除する外科手術などを行います。また、不整脈には薬物療法やペースメーカーによる治療なども行われています。

②拡張型心筋症

 心室筋(しんしつきん)が薄くなって収縮する力が低下し、心室全体が拡大する病気です。原因は不明ですが、いろいろな心筋疾患の終末的な病態と考えられています。

 症状は、疲れやすい、呼吸困難、浮腫(ふしゅ)(むくみ)などの心不全の症状が主です。また、不整脈を伴う場合もあります。

 治療は、まず過労、感染症、塩分や水分の過剰摂取などの心不全の増悪因子を避けることです。薬物治療としては利尿薬、強心薬、血管拡張薬などのほか、β遮断(ベータしゃだん)薬などが使われます。不整脈の治療が必要になる場合もあります。外科的治療としては、左心室心筋を一部切除するバチスタ手術などがあります。

 予後は一般的に不良で、治療に抵抗する重症心不全を伴った場合は心臓移植の適応となります。

③拘束型心筋症

 前記2つの心筋症のような心筋の著しい肥大や薄さはありませんが、心筋が拡張しづらくなる心筋症です。そのため、心室に血液を送っている心房が非常に大きくなることが特徴です。3つの心筋症のなかでは、最もまれな病気です。

 症状は、疲れやすい、呼吸困難、肝臓腫大、浮腫(むくみ)などがみられます。

 治療は、心不全に対する薬物療法が中心ですが、予後は一般的に不良で、心臓移植の適応となる場合もあります。

塚野 真也


どんな病気か

 心筋症とは、心筋細胞そのものが大きくなったり変質したりして、心臓の壁が厚くなったり、逆に薄く伸びてしまい、心臓の機能に異常を来してしまう病気のことです。その多くは原因不明です。

どんな種類があるか

 心筋症はその形態や機能異常の特徴から、肥大型(ひだいがた)心筋症拡張型(かくちょうがた)心筋症拘束型(こうそくがた)心筋症、不整脈原性右室(ふせいみゃくげんせいうしつ)心筋症などに分類されます。肥大型心筋症拡張型心筋症については、あとの項で詳しく説明します。

 拘束型心筋症は心筋の内側の心内膜が厚くなり、心筋が拘束されたようになって広がりにくくなる病気です。

 不整脈原性右室心筋症は右室全体のびまん性拡張と収縮低下を来す心筋症です。心室性頻拍症(しんしつせいひんぱくしょう)や右心不全で急死することが多く、とくに西欧では若年者や運動選手の突然死に多く認められることで注目されています。しばしば家族内発症がみられ、優性遺伝形式をとる場合が多い傾向にあります。

 これら以外にも、拡張相肥大型(かくちょうそうひだいがた)心筋症(肥大型心筋症のうち、徐々に左心室の内部が拡張し、不全心となる)や軽度拡張型心筋症(心室の拡張は軽度であるが収縮不全を示す)、可逆性(元にもどる)の心機能障害が特徴的なたこつぼ心筋症など、変わった経過をとる心筋症があります。このように、心不全の基礎疾患のなかでも心筋症はその多様性が特徴的です。

検査と診断

 心筋症は症状が出にくく、症状が出た時は病状がすでに進んでいる場合が多いので、病気を早く発見するためには検診が重要です。

 肥大型心筋症の場合には、聴診や心電図検査で病気の有無がわかります。心臓超音波検査を受ければ病気の状態もよくわかります。拡張型心筋症の場合は、心臓超音波検査や心臓カテーテル検査が必要になります。

治療の方法

 心筋症は原因不明のケースがほとんどなので、病状が進まないようにするための食事指導、症状を抑えるための薬物療法が主に行われます。どのタイプの心筋症であるかは関係なく、患者さんは、激しい運動や仕事を避け、精神的ストレスがかからないように注意します。

前嶋 康浩

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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