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細胞シート さいぼうしーと

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知恵蔵2015の解説

細胞シート

患者自身の細胞を培養してシート状にしたもの。患部に貼り、生着させることによって、これまで治療の難しかった様々な病気で症状の改善・治癒を期待できるとされ、再生医療一つとして注目されている。
メリットとして、患者自身の細胞を用いるため免疫拒絶反応が起こらず、非常に早く細胞が生着すること、残存機能を損なわずに根治を目指すことも可能であることなどが挙げられる。臓器移植には、ドナー不足や術後の免疫抑制剤が高価であるなどの問題点があったが、細胞シートによる治療が普及すれば臓器移植に頼らざるを得ないような疾患は減ると考えられる。また、手術で患部を摘出すると失われた機能は元に戻らないが、細胞シートを用いれば一時的に失う機能を最小限に抑えつつ、最終的には病前の状態まで回復させることも理論上は可能で、クオリティー・オブ・ライフ(QOL)の向上が見込めると期待されている。
用いる細胞は、心不全に対する治療の場合は太ももの筋肉組織から、歯周病治療の場合は親知らずなどの歯の周囲の組織から、角膜上皮疾患に対する治療の場合は口の内側の粘膜組織から採取した細胞である。これらの細胞を温度応答性の特殊な高分子表面を持つ培養基材(温度応答性培養皿)を用いて37度で培養すると、通常の培養皿を用いた時と同様に細胞が接着・増殖する。その後、32度以下に温度を下げると細胞がシート状に回収できる。細胞シート作成に必要な培養期間は細胞の種類や細胞をまく密度によって異なり、1日~2週間である。また、更に移植に十分なだけ細胞を増殖させる期間も入れると、歯周病治療の場合で約1カ月かかる。
細胞シートは工学分野の岡野光夫(東京女子医科大学先端生命医科学研究所所長・教授)が考案・開発したもので、2014年現在は、工学に加えて医学、理学の協働を得て、心臓、食道、角膜、軟骨、歯周の治療の臨床研究中。並行して自動培養装置や細胞評価技術など関連技術についても、国の補助金を得て産官学の協働で進められ、臨床応用可能な装置を開発中である。

(石川れい子  ライター / 2014年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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デジタル大辞泉の解説

さいぼう‐シート〔サイバウ‐〕【細胞シート】

患者自身の組織から採取した細胞を培養し、シート状にしたもの。シートの細胞から分泌されたサイトカインが、毛細血管や骨の形成を促進し、弱った細胞の活性化を図る。また、自身の細胞のため、拒否反応が起こらないという利点がある。このシートを利用した心臓、角膜、食道、肺などの再生医療の研究が進められている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

細胞シート
さいぼうしーと

患者から採取した細胞を培養し、シート状に接着・凝集化させて作製した細胞集合体。機能しなくなった患部に移植して再生を促す再生医療に用いられる。これまで行われてきた注射やカテーテルで細胞を注入する移植法に比べて拒絶反応がおこらず、移植細胞が確実に患部に定着するため、治療効果が飛躍的に高まる。
 いちど機能を失ったヒトの臓器が元に戻るには、これまで臓器移植以外に方法はなかった。しかし、臓器移植にまつわる脳死判定などの倫理的問題も完全に払拭(ふっしょく)されたわけではなく、また、臓器を提供するドナーもなかなかみつからないのが実情である。そこで考えだされたのが人工臓器にも応用可能な細胞シートを移植する方法であった本的には患者自身から採取した細胞をシャーレで培養して細胞シートを作成し、それを目的の部位に貼(は)るという、施術としては簡易な治療法である。日本をはじめ諸外国でも、角膜や心筋などを対象にした臨床応用研究が盛んに行われている。
 日本ではすでに眼科領域において臨床応用が進み、患者自身の細胞を使って培養した細胞シートを移植する角膜治療は、拒絶反応が少なく効果の持続する予後良好な治療法として高い評価を得ている。また循環器領域においては、すでに動物実験において筋芽細胞シートが心筋組織再生に効果があることが立証されており、おもに拡張型心筋症の患者に対する臨床研究が進められている。この治療法が確立されれば、心筋梗塞(こうそく)をはじめとする虚血性心疾患や重度の心筋症など、これまで臓器移植以外に回復が望めなかった心疾患も、壊死(えし)に陥った部位に細胞シートを移植することで機能の回復が見込めるようになると期待されている。さらに加齢などで軟骨がすり減り、痛みを伴う変形性関節症などについても、人工関節にかわるものとして臨床応用研究が始まっている。[編集部]

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