検眼鏡を使って患者の瞳孔(どうこう)(ひとみ)を通し眼底を観察する検査をいう。眼底には、人の目のフィルムである網膜でとらえた情報を脳へ伝える神経の出口にあたる視神経乳頭をはじめ、網膜や網膜の血管などがあり、眼底検査ではこれらがすべて直接に観察できる。したがって眼底検査は、眼底の病気の診断には欠かすことができないばかりでなく、いろいろな全身疾患のときにも診断上必要となる。その理由は、細動脈が直接観察できるのは眼底だけであること、また脳と関係の深い視神経乳頭が観察できることである。このため、高血圧症、糖尿病、脳腫瘍(しゅよう)をはじめとするいろいろな頭蓋(とうがい)内疾患などでは、眼底検査はたいせつな検査法となっている。
眼底検査には、倍率が高いが観察範囲の狭い直像検査法と、倍率は低いが眼底の端のほうまで広い範囲にわたって観察できる倒像検査法とがある。直像検査法は直接法ともいい、もっとも一般的に行われているもので、散瞳を十分にして手持ち電気検眼鏡を近づけて眼底をのぞく。視神経乳頭の細部所見の観察により、全身疾患の検査に適している。倒像検査法は間接法ともいい、直接法とは異なり暗室または準暗室が必要である。手持ち倒像電気検眼鏡で被検者から40~50センチメートル離れた位置からのぞく。網膜のいちばん端まで観察でき、眼球しんとう症や未熟児網膜症のほか、網膜剥離(はくり)など眼底疾患の検査に適している。しかし、手持ちの検眼鏡では両手がふさがれ、片眼視のために立体感がないので、近年は双眼倒像検査法が用いられるようになった。たとえば、額帯式双眼倒像鏡を使うと、眼底の立体視が可能であり、片手が自由になるので網膜剥離や硝子体(しょうしたい)手術などにも用いられる。また、細隙(さいげき)灯(スリットランプ)で適当な光束をつくって観察部分を光切片に切り、双眼顕微鏡で拡大しながら観察する細隙灯顕微鏡による眼底検査も行われる。
なお、眼底検査の結果を客観的に記録できる眼底撮影も普及している。高感度カラーフィルムの開発と閃光(せんこう)電球の発展により日常的に使われるようになったが、その後の技術的開発によって単に記録するという範囲を超えて網膜病変の形態的あるいは機能的検査法としても用いられ、さらには眼底映画撮影からテレビカメラの応用という段階まで進んできた。
[松井瑞夫]
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…硝子体の収縮などの変化で容易に網膜に裂孔が生じて網膜剝離(はくり)に進行することがある。
[眼底出血]
眼底検査は血管を見る検査といっても過言ではない。なかでも出血は各種疾患の重要な所見であり,出血源,出血部位などがそれぞれの疾患の原因,治療,予後を左右する。…
…本来は,眼が見えにくくなったときに,その原因をさぐるためにおこなわれる眼の検査一般を指す言葉であるが,現在では,(1)視力検査と眼鏡矯正のための検査,(2)眼底検査に用いる検眼鏡検査,の二つの意味に狭義に使われ,一般では(1)を指すことが多い。
[視力検査と眼鏡矯正]
視力を測定し,近視,遠視,乱視など屈折異常の有無を調べ,屈折異常や老視(老眼)のある場合は,最適の眼鏡の度数を決定するまでの検査。…
※「眼底検査」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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