無脊椎動物のなかの一動物門。一般にカギムシと呼ばれる。形態や発生から環形動物と節足動物との中間的な特徴をもっているところから,系統的に重要な意味がある。おもに熱帯地方の湿った土地にすみ,世界で80種ほどが知られているが,日本には産しない。
体は体長数cmから十数cmの円筒状で,頭部に1対の触角があり,胴部には環形動物の多毛類に似た,いぼ状の脚が対になって多数並んでいる。おのおのの脚の先端に数個のかぎづめをもっているところからカギムシと呼ばれている。体表面は薄くてやわらかいクチクラでおおわれ,体節的な構造はみられないが,体内では,おのおのの脚の場所に神経索が膨らんでおり,また脚の基部に腎管がそれぞれ開口しているなど環形動物の特徴によく似ている。一方,クチクラを脱皮して成長し,頭部の付属肢の1対が大あごになっており,心臓に心門があって,開放血管系であることなどは節足動物と共通している。カンブリア紀の地層から化石がでており,古い時代の動物の生残りである。
執筆者:今島 実
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動物分類学上、一つの門Onychophoraを形成する動物群。カギムシ綱Peripatideaの約70種からなり、化石は古生代カンブリア紀から出ている。現在の系統分類学では、環形動物のあるものが分化して節足動物に進化したという説が有力であるが、その根拠となるのが有爪動物である。環形動物と節足動物の中間に位置する動物として緩歩(かんぽ)動物と舌形(したがた)動物もあげられる。これら三動物群の間には直接的な類縁関係はないが、体制の分化程度が同じという意味で側節足動物としてまとめられることがある。なかでも、有爪動物がもっとも環形動物的な外形で、一般に体長10センチメートルまでの長虫状である。外からは体節構造は見られないが、多数の排出器官が環形動物の腎管(じんかん)のように体節的に前後に並んで開いており、また多数の脚(あし)が対(つい)をなしている。脚の先には、錨(いかり)のようなつめがあり、それがカギムシや有爪動物の名の由来である。筋肉や脳の構造も環形動物との強い類縁を示しているが、心臓、体腔(たいこう)、気管、口器、卵の発生様式などは節足動物と一致するところが多い。東南アジア、オーストラリア、南アメリカなどの熱帯・亜熱帯地方の森林中の湿った土地にすむ。
[武田正倫]
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…これらは環形動物と節足動物の中間のものであろう。熱帯の湿地に生息する〈有爪(ゆうそう)動物門〉(カギムシ類,120種)は,目だった頭節がなく,体の分節が同質的で,いぼ足に節がないなどの点が環形動物に等しいが,いぼ足の先端にはつめがあり,体腔が一次と二次がいっしょになった混成体腔で,キチン性のクチクラ(外骨格)をもち,原始的な気管があるなどの点は節足動物に等しく,後者の祖先に近いものと考えられる。(d)節のある長い足ができて歩行が自由になり,感覚器官が発達するもの 〈節足動物門〉は体は体節の一部が合一して,頭部,胸部,腹部などとなり,足(脚)は長くのびて多くの可動性の節に分かれ,先端にはつめがあって歩くのに適する。…
※「有爪動物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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