緯度変化現象を観測・研究するための機関。1880年代に発見された極運動(地球回転の乱れの一側面)の解明のため、国際測地学協会は「国際緯度観測事業」を組織し、世界各地の北緯39度8分上の6か所に観測所を設置した。日本では1899年(明治32)岩手県水沢市(現奥州(おうしゅう)市)に文部省所轄研究所の臨時緯度観測所として発足した。1902年に初代所長木村栄(ひさし)が発見したz項は、地球内部構造の非剛体性の観測的検証の一例として名高い。緯度観測所の名称は、設立当時、地球回転観測の唯一の手段が天頂儀による緯度観測であったことに由来している。その後、計測技術の発展に伴い、経度観測も可能な写真天頂筒やアストロラーベも導入され、また重力計、伸縮計、歪(ひずみ)計などの地球物理学的観測も開始された。このように、現在は「地球の回転と変形」を総合的に研究する場としての性格を有するに至っている。また、国際極運動事業の中央局として、世界の約30か国、70観測所を傘下に収める地球回転研究の国際センターとしても活動している。なお、1988年(昭和63)に所轄が国立天文台へ移り、VERA観測所との統合などを経て、現在は国立天文台水沢VLBI観測所。
[横山紘一]
極運動によって起こる天文経緯度の変化を観測するところ。日本の緯度観測所は岩手県水沢市(現,奥州市)にあり,改編によって現在は国立天文台水沢VERA観測所となっている。北緯39°08′線上に設置された国際緯度観測事業の観測所として,国際測地学協会と日本国政府の条約に基づいて1899年(明治32)臨時緯度観測所が設置され,1920年に正式に緯度観測所と改称された。創設時の観測機は眼視天頂儀だけであったが,現在は浮遊天頂儀,写真天頂筒,アストロラーブなどの天文光学観測機による天文経緯度の観測および人工衛星のドップラー観測などの新しい技術による極運動観測が行われている。22年から35年まで国際緯度観測事業の中央局を担当した。1902年,木村栄は緯度変化の中に新しいZ項(木村項)を発見した。Z項は流体核をもつ地球の章動に原因をもつもので,地球内部構造の推定に対して重要な観測事実となっている。国際緯度観測事業は62年から国際極運動事業に改組され,全世界の天文経緯度観測,ドップラー観測,レーザー測距,超長基線電波干渉計などの新技術による観測を総合して,極運動,地球自転速度の変動およびZ項を決定することになった。62年から水沢緯度観測所が中央局を担当。極運動は地球の内部外部の構成に深く関係しているので,天文観測のみならず地球潮汐,絶対重力,地震,気象などの地球物理学的観測施設をもち,極運動の総合的研究が行われている。
執筆者:若生 康二郎
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…上記の諸天文台は,各国の国立の天文台としての役割を果たしてきた点でも共通している。なお,日本の水沢はじめ,北緯39゜8′の緯度上に分布する世界数ヵ所に設けられた緯度観測所も,経緯度決定を行う位置天文学の天文台である。 18世紀後半から19世紀になると,連星や二重星および恒星一般の距離や分布などを対象にした恒星天文学の観測が盛んになり,例えば南アフリカのケープ天文台(現在は南アフリカ天文台に統合)は,1820年にこの目的で作られたものである。…
※「緯度観測所」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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