耳介血腫(読み)じかいけっしゅ(その他表記)Auricular hematoma

六訂版 家庭医学大全科 「耳介血腫」の解説

耳介血腫
じかいけっしゅ
Auricular hematoma
(外傷)

どんな外傷か

 耳への圧迫などの刺激が繰り返されて起こります。皮下または軟骨膜下の出血が起こり、血腫をつくります。初期には耳介(じかい)耳殻(じかく))の皮膚が軟らかくふくれあがり波動があります。

原因は何か

 主にスポーツ、とくに相撲柔道レスリングのように耳の圧迫刺激が繰り返された場合に起こります。

症状の現れ方と診断

 耳介前面の上半分に青赤色の球形腫瘤(しゅりゅう)が急に発生します。内容は初期には血性で、のちには黄色透明な液状になります。

 病歴と視診で、診断は容易です。

治療の方法

 穿刺(せんし)(針を刺す)、吸引により血液を除去できますが、圧迫しておかないと再発します。圧迫の方法は、耳介の凹凸に合わせてガーゼタンポンを当て、接着剤で固定し、軟骨をとおして糸をかけ耳介両面に圧迫タンポンを縫いつけます。

 最近、穿刺により血腫内容を吸引したのち、血腫内に入れた外套(二重になっている穿刺針の外側のみ)を2週間そのままにして、再び血腫がたまるのを防ぐ方法が報告されており、有用です。

 手術的に血腫を除去する場合に、耳介の後面切開を入れて、軟骨を除去して前面の血腫を除く方法は、傷が目立たないため推奨できます。

神﨑 仁


耳介血腫
じかいけっしゅ
Auricular hematoma
(耳の病気)

どんな病気か

 耳介の前面は皮膚と軟骨の間のクッションになる皮下組織が少なくなっています。そのため、この部分に外部から打撲(だぼく)摩擦などの刺激を加えると簡単に出血し、皮膚の下や軟骨と軟骨膜(軟骨を包む膜)の間に血液の塊を作ります(図7)。ボクシング、柔道、相撲などの格闘技ラグビーアメリカンフットボールなどの選手によくみられます。

治療の方法

 症状が軽いものは放置しても治ることがあります。はれが強いものに対しては穿刺(せんし)(針をさす)してたまっている血液を除去する必要があります。しかし、一度の穿刺ではなかなか治らず、何度も穿刺を繰り返す例もしばしば認められます。

 穿刺を繰り返しても改善がみられない場合は、皮膚を切開し、たまっている血液と滲出液を持続的に排出できるようにドレーン(排出用の医療器具)を入れ、さらに再び血液がたまらないように耳介を圧迫する必要があります。このような操作をする場合、感染を起こして軟骨膜炎を生じると耳介が変形してしまう可能性があるので、抗生剤を内服します。

 それでも何度も血腫を繰り返すと、皮下組織は線維化や瘢痕化(はんこんか)を起こし、硬く変形した耳介になります。いったんこの状態になると、これを治すには形成術が必要になります。ただし手術を行うならば、その後は外部からの刺激を加えない、つまりその格闘技やスポーツは行わないことが望ましいでしょう。

中山 明峰


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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