職業性アレルギー

内科学 第10版の解説

職業性アレルギー(アレルギー性疾患)

定義・概念
 職業性アレルギーは,個々の職業で扱っている物質が抗原となって引き起こされるアレルギー反応に伴う一連の症状をいう.
原因・病因
 職業性アレルギーの原因となりうる物質は多数報告されており,表10-31-1に比較的頻度の多い例をあげる.症状を引き起こすメカニズムは原因抗原により異なり,免疫学的機序を介するものと介さないものに分類される.免疫学的機序を介する職業性アレルギーの多くは,IgEが関与するI型アレルギー反応によるが,IgGが関与するⅢ型アレルギー反応によるもの,T細胞が関与するⅣ型アレルギー時反応によるものなどもあり,また,これらは混合して起きることもあり,複雑な病態を呈している.
臨床症状
1)職業性喘息:
職業性喘息は一般の気管支喘息と症状が同じである.患者は通常,呼吸促迫,胸部圧迫感,喘鳴,咳を訴える.またしばしばくしゃみ,鼻漏,流涙といった上部呼吸器症状や眼症状を伴う.これらの症状は特異的な塵や蒸気への暴露に関連して労働時間内に起こり,週末や休日に消失する典型例もあるが,仕事を終わった後数時間現れないものや,夜間における喘鳴が唯一の症状のこともあり,就労時間と症状出現時間との関係が不明瞭なことも多い.よって,職業性喘息と通常の気管支喘息との症状だけでの鑑別は困難であることも多く,診断がつかないまま通常の喘息として治療されている例が多い.職業性喘息は近年増加傾向にあり,成人発症の気管支喘息の約5%が職業性喘息と考えられている.
2)過敏性肺炎:
主として有機塵埃を吸入することにより,Ⅲ型およびⅣ型アレルギー反応として発症する.真菌類やキノコ胞子などが原因となることが多く,酪農業者がその飼料の干し草に生育する放線菌類の胞子を吸入し発症する農夫肺が代表的である.
3)皮膚アレルギー:
職業で扱う原因物質が皮膚に触れることにより,じんま疹,湿疹,発赤などが皮膚に生じる.医療関係者,化学物質を扱う職業,理容業などに多い.
4)鼻アレルギー:
基本的に一般の鼻アレルギーと同様であり,原因が職業に由来する.くしゃみ,水様鼻汁,鼻閉が主症状であり,気管支喘息や眼アレルギーを合併することもある.
診断・検査成績
 就労中に呼吸機能検査で1秒量の低下やピークフロー値の低下が認められれば,原因物質の職業的暴露がアレルギーの原因と考えられる.血清中の総IgE値や特異的IgEをRAST法(radioallergosorbent assay) やFEIA法(fluorescence enzyme immunoassay) を用いて測定する.また特異的IgGをELISA(enzyme immunosorbent assay)を用いて測定する.これらの検査では陽性反応の抗原が必ずしも原因抗原でないこともあるため,その解釈には注意が必要である.これに対し,抗原誘発試験は原因物質を特定する上で最も有用であり,吸入誘発試験,皮膚試験(Ⅰ型アレルギーの診断には皮内テストを,Ⅳ型アレルギーの診断にはパッチテストを行う),粘膜試験がある.これらはときに重篤なアレルギー反応や喘息発作を起こすことがあるので注意が必要である.
治療・予防
1)原因の除去・回避:
職業性アレルギーの多くは抗原となっている原因物質に暴露する機会がなければ,理論上,症状が出現しないため,治療の第一は原因の除去である.転職や配置転換などにより,原因を避けることが最善であるが,職業は患者自身に重要なことがあるうえ,熟練を要する零細企業の職場に比較的多く発症している点など困難も多い.完全な除去が難しい場合は暴露抗原の軽減化をはかる必要性がある.ほかのアレルギー疾患の既往のある者は,アレルゲンとなりうる物質に感受性が高く,それらの症状の増悪や喘息症状を起こす可能性が高い.雇用者,産業医,労働相談員などの連携により,定期健診や職場の環境整備などの労働衛生対策が重要である.
2)対症療法:
一般に現れている症状および疾患に合わせた治療を対症的に行う.
3)減感作療法(アレルゲン特異的免疫療法):
治療用の抗原が入手可能な場合,減感作療法も有効な治療法であることも報告されている.IgEを介するⅠ型アレルギー反応によるものは,減感作療法が有効なことが多い.
経過・予後
 一般的に,症状は暴露抗原の除去から2年以内に改善される.特に,即時型反応のみの症例や,暴露時間が短かった症例ほど予後がよい.[足立 満]
■文献
Bernstein DI: Allergic reactions to workplace allergens. JAMA, 278: 1907-1913, 1997.
Peden D: Environmental and occupational allergies. J Allergy Clin Immunol, 125: S150-60, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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