工場などの作業現場において,労働者の指揮,監督,指導にあたる,職制上の最末端職位に位置するものの総称。現場監督者とも呼ばれる。具体的な呼称は企業によりさまざまであり,作業長,組長,伍長,班長などが例としてあげられる。アメリカやイギリスでは,フォアマンforemanあるいはスーパーバイザーsupervisor,またドイツではマイスターMeister,フランスではコントルメートルcontremaîtreと呼ばれるものにあたる。職長を中心とした作業現場の管理組織を職長制度という。
職長の職務権限は,国,時代,産業,企業によって異なる。大きな歴史的推移をみると,資本主義の初期においては,労働者の雇用,賃金の決定,解雇,作業計画,資材調達,仕事の割当てなど労務管理や生産管理の広範な権限をもっていたが,その後,労務部や生産管理部などのスタッフ組織が整備されるにつれ,権限がそこに吸収され,しだいに職長の権限は縮小した。職場内の業務割当てや残業命令など日常作業の進捗管理,さらに,勤怠管理,人事考課,人間関係処理などの労務管理が職長の中心的職務となってきている。
従来,日本の職長は,現場経験が豊かで,技能度の高い年長者から選ばれる(年功昇進)のが通例であった。しかし近年は,技術革新の進展を反映し,技能経験よりも,技術的知識,管理能力,組織能力などが職長の資格要件として重視されるようになっている。
アメリカやイギリスの職長は,ホワイトカラーと位置づけられ,非組合員であることも多く,経営の最末端管理者としての性格が強い。これに対し,日本では,職制上は職場における経営の代表者であるが,職場集団の代表者としての性格を兼ね備えており,組合員であることが多い。
執筆者:佐藤 博樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
経営組織を構成する各種の管理者のうち、生産現場にあって各種作業者を直接に指揮・監督する職位。アメリカのフォアマンforemanにあたるが、実質的な職務内容、職務権限は、それよりもかなり限定されている。その職務内容は、現場管理者であるために多岐にわたっている。おもな内容としては、(1)業務遂行の監督、就業規則に基づく規律保持、人間関係の円滑化、人事考課などを内容とする従業員管理、(2)品質向上のためのサークル活動の推進などを内容とする品質管理、(3)原価節減の指導などを内容とする原価管理、(4)生産計画の周知化、進度調整などを内容とする工程管理、(5)設備の保全管理、(6)作業方法の改善などである。工業化の初期には、雇用や賃金に関する権限も与えられていたが、それらは近代化とともに人事部や労務部に移された。
[森本三男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…F.W.テーラーを始祖とする工場管理の方法。狭義には,テーラーが提唱した工場労働の時間研究time studyによる標準時間と作業量の設定,職能別職長制度に,ギルブレスFrank Bunker Gilbreth(1868‐1924)が開発した作業方法の研究(動作研究motion study)による作業簡素化・標準化を加えた管理方式をいい,しばしばテーラー・システムと同義に用いられる。広義には,各種の科学的理論に基づく経営管理の方策・技術・組織制度を総称し,経験・勘にたよる管理を成行き管理として対比的に用いる。…
…ただニューイングランドなどでは,第1次大戦のころまでかなり残っていた。
[職長制度]
内部請負制の廃止は,企業家,少なくともその代理人が直接,従業員としてどのような労働者をどれだけ選抜し,その能力の保全,向上をはかり,どのように賃金その他の報償を行い,どのように昇進の機会を与えていくか,といったことを行うことを意味する。かくて業務管理の仕事が重要な意味をもって登場してくるのである。…
…職場の労働者を統率し,職場の課業の遂行を指揮する立場にある人を指し,第一線監督者first line supervisorともいう。たとえば,日本の職長,アメリカやイギリスのフォアマンforeman,ドイツのマイスターMeister,フランスのメートルmaître,北欧や東欧やロシアのメイステルmeisterがこれに相当する。 現場監督者は産業組織内のその立場からして,生産能率やその他の労働関係に対して重要な要素をもち,今日では〈産業のキーマン〉ともいわれている。…
※「職長」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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