部長,課長,係長,作業長など経営管理上の指揮命令の位階的組織・秩序をいう。狭い意味では,職長を中心とした現場の末端管理組織のことを指す。さらに,職制組織の下位に位置するものが上位に位置するものを指すときや,また,経営管理組織において経営者層を除き管理監督職に就いているもの一般を示すときにも使われる。
第2次大戦前の日本の大企業の職制組織は,職制秩序に身分制秩序が組み合わされるという特徴がみられた。この身分制秩序は,大きく分けると,臨時工,工員,職員などからなり,それぞれがまたいくつかに分かれていた。工員は,平工(並工),三等職工,二等職工,一等職工,職員は,準社員,社員などに区分されていた。職制秩序の職位と身分制秩序は,対応関係にあるとともに,義務教育(小学校)修了者は工員,中等教育(中学校,実業学校)修了者は初・中級職員,高等教育(専門学校,大学)修了者は上級職員に処遇するというように,両者は主として学歴によって格付けが決められていた(学歴別身分制)。工員と職員(社員)との身分差は,賃金額,賃金形態(たとえば,工員は日給,職員は月給など),福利厚生の利用など労務管理上の各領域における厳然たる格差として現れていた。こうした格差の存在に,身分制秩序と呼ばれるゆえんがある。
戦後になると,経営民主化や職員・工員の身分差撤廃を求める労働組合運動の結果,職制秩序にみられる差別的身分制秩序が撤廃され,職位と職務の相違という職能区分による新たな職制秩序へと変革された。この結果,戦前は職員のみに適用されていた月給制が正規従業員全員に適用されるなど,戦前は職員のみを対象とした労務管理制度が,正規従業員全体へと拡大されることとなった。戦後の職制秩序は,戦前の身分と職位によるものから,職能と職位を基礎とするものへと変革されたが,学歴を職制の位階秩序の土台に置くという戦前の性格は,戦後に継承された(学歴別職能制)。
執筆者:佐藤 博樹
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
経営実務上の用語。この用語の起源は古く、1879年(明治12)「予州別子鉱山職制」や1893年「富士製紙会社職制」、さらには1900年(明治33)施行の鉄道営業法の条文第19条などにおいてもみいだすことができる。
広くは、企業において経営目的達成のために体系的に編成される組織機構やそこでの指揮命令系統を意味するものとして、狭くは、そこに編成されている職務に関する制度、具体的内容としては職務の分掌範囲や責任権限を定めた規定・制度を意味するものとして用いられる。後者には、職務をその種類や複雑さと責任の度合いに応じて分類した職階(しょっかい)制などを含める場合もある。いずれも社則として公式に定められる。このほかに、俗語として、経営組織における管理・監督的地位あるいはその地位にある人(部長、課長、係長、作業長、工長など)といった意味で用いられることがある。
[浪江 巖]
『間宏著『日本労務管理史研究』(1964・ダイヤモンド社)』
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…一般に拠出原則に基づく年金制度では,一定期間の保険料拠出が年金受給権取得のための条件の一つとなっている。そのため,年金制度の給付費は制度発足当初においてはほとんどなく,時間の経過とともにしだいに増加し,数十年という歳月を経過した後に,はじめて給付費の実質的な大きさが一定水準で推移することとなる。このように,時間的に大きく変化する給付費を賄っていくための財源を,どのような考え方で調達していくかという計画のことを,年金制度の財政方式と呼んでいる。…
※「職制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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