胃ポリープ(読み)いポリープ(英語表記)stomach polyp

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

胃ポリープ
いポリープ
stomach polyp

胃の粘膜から発生して内腔突出した上皮性の良性腫瘍をいう。自覚症状はほとんどないが,ときには胃の重圧感,食欲不振,吐き気,鈍痛など,慢性胃炎に似た症状を現すことがある。X線検査で容易に診断できる。ポリープ良性腫瘍であるが,とまぎらわしく,一般に直径が大きくなるにつれて癌化の可能性が高まる。ことに腫瘍性の大腸型のものは癌化することもあるので,前癌病変とさえいわれる。部分摘出を行うが,手術中に組織検査をして,少しでも癌の疑いのあるときは胃切除を行う。

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世界大百科事典 第2版の解説

いポリープ【胃ポリープ gastric polyp】

胃に発生したポリープ。ポリープ(ポリプ)とは,元来多数の触手をもつクラゲのような形の生物に対する呼名であるが,人体では鼻腔,消化管等管状の器官に発生したいぼ()状の突出に対して用いられる。しかし,もともと形の形容から生じた病名のため,組織学的な診断との間には多少の混乱がある。胃内腔にいぼ状に突出するものには,上皮性の隆起と非上皮性の隆起がある。前者は胃内面の粘膜層上皮細胞から発生したものであり,後者はそれより深い層の筋肉や結合組織から生じたもので,それぞれ良性のものと悪性のものとがある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

胃ポリープ
いぽりーぷ

胃の粘膜上皮が異常増殖して胃内腔(いないくう)に突出した病変。その形状は多様で、有茎性のものをはじめ、半球状や扁平(へんぺい)型などもあり、表面が滑らかなものや凹凸のあるもの、また絨毛(じゅうもう)状のものもある。多くは単発性であるが、複数のポリープを有したり、多発することもある。大きさは1センチメートル以内であることが多いが、ときに2センチメートル以上のものもみられる。

 ポリープは厳密には前述のとおり胃粘膜の病変であるが、臨床的には胃粘膜の病変に限らず、胃粘膜がなんらかの原因で隆起した形態を呈した場合も含まれることが少なくない。胃のX線検査(バリウムを用いたX線二重造影)でこのような胃の病変をみいだした場合、その病変が巌密な意味での胃ポリープであるかどうかを鑑別できない場合もあり、上部消化管内視鏡検査などの精査によって隆起性病変の評価がなされる。臨床的に問題になるのは、そのポリープが良性なのか、悪性あるいは悪性に移行する可能性があるものかどうかである。

 胃ポリープはおもに、良性のまま経過する「胃底腺(いていせん)ポリープ」、萎縮(いしゅく)性胃炎を背景としている「過形成性ポリープ」、悪性化の可能性がある腫瘍(しゅよう)の性格をもった「胃腺(せん)腫」に分けられる。萎縮性胃炎を認める場合、早期胃がんを含めた悪性腫瘍を併存する場合があるため、ポリープ以外の背景胃粘膜についても上部消化管内視鏡による評価が行われる。

 胃ポリープに対する治療は、腺腫が否定できない場合や悪性が疑われる場合、径が大きい場合などで考慮される。内視鏡下で生検を行い、組織検査・診断の結果をみて経過観察をするか、ポリープ切除が行われる。ポリープ切除術(ポリペクトミー)は内視鏡下で行われ、切除された病変は病理診断にてがんの有無が評価される。がんでない場合であっても、異型度やポリープの径、切除断端の評価(採り切れているかどうか)や、背景粘膜の萎縮の有無などから、経過観察や再検査などフォローアップの方針が検討される。

[渡邊清高 2019年5月21日]

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六訂版 家庭医学大全科の解説

胃ポリープ
いポリープ
Gastric polyp
(食道・胃・腸の病気)

どんな病気か

 ポリープの語源は、ギリシア語のpolupous(“多くの足”の意)に由来します。臨床の現場では、基本的に良性の隆起性病変を指す肉眼的な名称として使われています。日本消化器病学会は胃ポリープを、「胃粘膜上皮(いねんまくじょうひ)の異常増殖に基づく胃内腔に突出した病変」と定義しています。胃ポリープで、臨床上多く見かけるものは、腺腫性(せんしゅせい)ポリープ、過形成性(かけいせいせい)ポリープ、胃底腺(いていせん)ポリープの3つです。

 腺腫性ポリープは良悪性境界病変に相当し、一般には胃腺腫(いせんしゅ)と呼ばれます。高齢の男性に多く、肉眼的には扁平な花壇状、菊花状隆起で色調は褪色で蒼白にみえます。前がん病変と考えられており、2㎝以上になると約半数にがんの合併があります。

 過形成性ポリープはやや女性に多く、大きさや形態は限局性の発赤した小隆起から、(くき)をもつ大きなものまでさまざまです。まれにがん化します。

 胃底腺ポリープは、米粒大の正色調の小さな無茎(むけい)ないし亜有茎性(あゆうけいせい)の隆起性病変です。中年の女性によく起こり、がん化せず、しばしば自然に消失します。

原因は何か

①腺腫性ポリープ

 背景粘膜に強い萎縮(いしゅく)がみられることから腸上皮化生粘膜(ちょうじょうひかせいねんまく)(胃の粘膜が腸の粘膜様に性質が変化すること)から発生すると考えられていますが、詳細な病因は不明です。

②過形成性ポリープ

 びらんによって起こる粘膜の欠損に対する上皮の代償的過形成に起因すると考えられています。ヘリコバクター・ピロリという細菌の感染が多いことから、胃粘膜の萎縮と腸上皮化生粘膜が本ポリープの好発する胃粘膜環境であるとも考えられています。

③胃底腺ポリープ

 背景粘膜には萎縮がなく、酸の分泌が盛んです。ヘリコバクター・ピロリの関与は否定的です。女性ホルモンやガストリン(消化管ホルモンの一種)の関与も指摘されていますが、はっきりした原因は不明です。

症状の現れ方

 いずれの胃ポリープにも、特有の自覚症状はありません。多くは無症状で、X線や内視鏡の検査で偶然に発見されます。大きくなった過形成性ポリープは、まれに消化管出血の原因になります。

 胃底腺ポリープは、萎縮の少ない胃酸分泌が盛んな胃粘膜に多く発生することから、過酸症状(上腹部痛、胸やけ、しゃっくり)を自覚することがあります。

検査と診断

 診断は、内視鏡検査によって組織の一部を採取して調べる生検を行うことが原則ですが、肉眼的な形態からもある程度は可能です。

治療の方法

①腺腫性ポリープ

 腺腫のがん化と同時に、背景となる胃粘膜が分化型腺がんの発生環境と共通するため、離れた部位のがんの合併を常に念頭においておく必要があります。1年に1回は定期的な経過観察を行い、経過観察中に増大傾向を示すもの(2㎝以上)や、肉眼的形態からがんの合併が疑われる場合は、診断的治療目的で内視鏡を用いて切除することが多くなっています。

 大きくなってがん化しても、ほとんどが粘膜内がんであるため、大きさにかかわらず生命の予後は良好です。

②過形成性ポリープ

 小さなものは治療の必要はありません。大きさや形態の変化はまれではなく、時に自然に消えてなくなる例もみられます。また最近ではヘリコバクター・ピロリの除菌によって消失する例が報告されています。

 切除の対象になる例としては、肉眼で見てがんの合併が疑われるもの、出血性のもの、十二指腸へ落ちこむものなどがあげられます。がん化した場合でもほとんどが粘膜内がんであるため、生命の予後は良好です。

③胃底腺ポリープ

 過酸症状に対して酸分泌抑制薬の処方が必要になることがありますが、ポリープそのものに対しての治療は必要ありません。

病気に気づいたらどうする

 1㎝を超える腺腫性ポリープ、過形成性ポリープは定期的な経過観察が望まれます。経過観察中に大きくなってくるようなら、医師と相談のうえ、内視鏡を用いた切除を考慮してください。いずれのポリープでも、小さなものならば放置してもまず問題はありません。

千葉 勉, 伊藤 俊之

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報