胡蝶の夢(読み)コチョウノユメ

デジタル大辞泉 「胡蝶の夢」の意味・読み・例文・類語

こちょう‐の‐ゆめ〔コテフ‐〕【××蝶の夢】

荘子が夢の中で胡蝶になり、自分が胡蝶か、胡蝶が自分か区別がつかなくなったという「荘子斉物論故事に基づく》自分と物との区別のつかない物我一体の境地、または現実と夢とが区別できないことのたとえ。

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精選版 日本国語大辞典 「胡蝶の夢」の意味・読み・例文・類語

こちょう【胡蝶】 の 夢(ゆめ)

  1. ( 中国荘周が胡蝶となった夢を見、さめて後、自分が夢で胡蝶となったのか、胡蝶が今夢の中で自分になっているのか疑ったという「荘子‐斉物論」の故事から ) 夢と現実とがさだかでないことのたとえ。その区別を超越するたとえ。また、人生のはかないたとえ。《 季語・春 》
    1. [初出の実例]「花に飛ぶ胡蝶の夢の戯れなり」(出典:大観本謡曲・胡蝶(1516頃))

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故事成語を知る辞典 「胡蝶の夢」の解説

胡蝶の夢

夢と現実の違いは、実ははっきりしないということ。また、人生のはかないことのたとえ。

[使用例] 拿翁ナポレオン勝利、指を屈すれば幾十年に過ぎず、これもちょうの夢か[北村透谷*最後の勝利者は誰ぞ|1892]

[使用例] 夢に見た蝶々オレだか、今のオレが夢だか分るもんかという荘周先生の説はここのところかも知れない[坂口安吾*金銭無情|1947]

[由来] 「荘子せいぶつろん」に出てくる話から。あるとき、思想家のそうしゅう(荘子)は、胡蝶(ちょうちょ)となった夢を見ました。花から花へと飛び回っているのが楽しく、自分が荘周だとはまったく意識していません。ところが、夢から覚めてみると、びっくりすることに荘周なのです。そこで、彼は考え込みました。はて、荘周が夢で胡蝶となったのか、それとも胡蝶が夢の中で荘周になっているのか。荘周と胡蝶とはもちろん別ものではあるけれど、お互いに変化し合えるものなのだなあ……。

[解説] ❶「荘子」の哲学としては、自分と自分以外のものとの間に絶対的な区別はなく、この世はすべて一体である、ということを表すエピソード。花から花へと飛び回る胡蝶のイメージが美しく、一読印象に残ります。❷しかし、「荘子」の哲学は、一般人にはちょっと難解。そこで、故事成語としては、「人生は夢のようである」というところから、主に人生のはかなさのたとえとして使われます。美しい胡蝶の姿を踏まえて、楽しいできごとやすばらしいできごとも実ははかない、という文脈で用いるのが、一般的でしょう。

〔異形〕ちょうの夢/荘周の夢/夢に胡蝶となる/ちょう

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「胡蝶の夢」の意味・わかりやすい解説

胡蝶の夢
こちょうのゆめ

夢と現実とがはっきりと区別できないこと、またその区別を超越できないことのたとえ。中国、戦国時代の思想家荘子が、蝶となった夢をみ、目覚めたのち、自分が夢のなかで胡蝶に変身したのか、胡蝶がいま夢のなかで自分になっているのか、と疑ったと伝える『荘子』「斉物論」の故事による。転じて、人生のはかないことのたとえともされ、「胡蝶の夢の百年目」ということばもあるが、これは、人生を振り返り、夢であったかのように思うこと、死期が迫ったことに驚いて後悔することのたとえとなっている。

[田所義行]

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デジタル大辞泉プラス 「胡蝶の夢」の解説

胡蝶の夢

司馬遼太郎の長編歴史小説。1979年刊行。

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