六訂版 家庭医学大全科 「脈絡膜腫瘍」の解説
脈絡膜腫瘍
みゃくらくまくしゅよう
Choroidal tumor
(眼の病気)
どんな病気か
眼にも腫瘍ができますが、眼の腫瘍がよくできる部位がぶどう膜といわれる部分です。俗に茶目といわれる部分を
この部位の特徴は、色素が多く、血管が豊富にあることです。そのため、ぶどう膜には原発性の腫瘍がよくでき、他の部位の腫瘍からの転移も起こるのです。とくに脈絡膜は、ぶどう膜のなかでも最も腫瘍が生じる場所で、多くの眼腫瘍がこの部位にできます。
この脈絡膜腫瘍の代表として、原発性腫瘍では
症状の現れ方
腫瘍が生じる部位により異なります。飛蚊症(ひぶんしょう)(コラム)が初期の症状である場合もありますが、転移性の腫瘍の場合、多くは網膜のいちばん感度のよい
検査と診断
診断は、眼底検査による腫瘍の存在を確認することが第一歩です。原発性の代表的脈絡膜腫瘍である悪性黒色腫では、茶色~黒褐色の隆起性病変として認められます。また、
転移性のものでは、多くの場合、眼の病変の診断の前に肺がんや乳がんなどの診断がついており、その経過中に症状が現れ、眼底検査で診断されます。なかには、眼の腫瘍の発見を機に原発巣が見つかる場合もあります。
治療の方法
治療方法は、原発性か転移性かにより異なります。
原発性の代表である悪性黒色腫の治療として、主に次のような方法があります。①眼球摘出、②腫瘍局所切除、③放射線治療です。これらの治療方法の選択は、腫瘍の大きさや、その広がり方などを考慮して決定されます。それ以外にも、抗がん薬の眼動脈への注入療法、温熱療法などがあります。残念ながら悪性黒色腫の特徴として、全身への転移が問題となり、予後は大変不良です。
転移性の場合、腫瘍の性状は原発巣の腫瘍と同じです。治療の方法は、多くの場合、放射線治療と化学療法が中心となります。この場合も予後は大変不良です。
病気に気づいたらどうする
脈絡膜腫瘍の抱える最大の問題は、眼球の維持と、生命の予後です。悪性黒色腫は眼科腫瘍としては多いものですが、多くの眼科医にとっては、頻繁に遭遇する腫瘍ではないので、眼腫瘍専門の眼科医に相談されることをすすめます。
転移性の場合は、原発巣を治療している医師と、放射線医ならびに眼科医の間での連携が大切になります。これらの連携がとられるように主治医に相談し、治療することが重要です。
尾崎 志郎
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報