ウイルスや種々の感染症、アレルギーなどによって急性ないし亜急性に、びまん性または散在性の炎症が脊髄にみられる病気で、原因不明のものも少なくない。近年、多発性硬化症に似た脱髄性のびまん性散在性の脳脊髄炎が多くみられ、原因不明の脊髄炎の数は著しく減少している。
症状としては、急性ないし亜急性に四肢の痛み、発熱に引き続き、四肢の弛緩(しかん)性麻痺(まひ)、知覚鈍麻ないし知覚脱失などが、病巣に一致する脊髄節以下にみられ、膀胱(ぼうこう)・直腸障害をおこす。慢性例では病巣以下に褥瘡(じょくそう)(床ずれ)をおこしやすく、二次性の感染症をおこして死亡することもある。脱髄性脊髄炎はインフルエンザや麻疹(ましん)にかかり、回復したのち、または予防注射などによっておこるアレルギー性の脊髄炎で、白質である脊髄神経路がおもに冒されるが、回復も早く、痕跡(こんせき)を残さず治癒する例が多い。
治療は、急性期には絶対安静とし、副腎(ふくじん)皮質ステロイドの投与を行うと効果がある。なお、多発性硬化症の一型であるデビック病は、急性の脊髄炎による対麻痺と眼症状(視力低下から完全失明にまで至る視力障害)が同時にみられるもので、視神経(視束)脊髄炎とよばれている。
[里吉営二郎]
脊髄の炎症性疾患が脊髄炎であるが,必ずしも炎症に限らず,血管障害,圧迫,アレルギー,中毒などによる同様症状のものも脊髄炎と呼ばれることが多い(厳密には炎症以外によるものは脊髄炎というべきではなく,脊髄症,ミエロパシーmyelopathyと呼ばれるべきである)。
急性のものは急性横断性脊髄炎となることが多く,急性に発症,数時間から2~3日で両下肢麻痺,下半身の知覚障害および膀胱・直腸障害を呈する。視神経炎を伴う場合はデビック病Devic's diseaseと呼ばれ,多発性硬化症の一型である。髄液や,MRIあるいはX線検査(単純,ミエログラフィー,血管撮影,CTなど)により診断を確定することが重要である。たとえば腫瘍などによる圧迫の場合は外科的手術が可能なことがあり,炎症性や血管障害のときはステロイド剤が有効なこともある。慢性の場合は,同様に検索するが原因不明のことが多い。
対症療法としては,急性では絶対安静を保って呼吸麻痺の有無に注意し,慢性期ではリハビリテーションを行うが,褥瘡(じよくそう),尿路感染,関節拘縮を生じないよう予防することがすべてを通じて重要である。
執筆者:水沢 英洋
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