四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「腫瘍マーカーとは」の解説
腫瘍マーカーとは
腫瘍とは、体内の細胞の一部が突然、異常分裂して増殖し、しだいに大きくなってしこりになるものです。良性と悪性があり、悪性腫瘍が「がん」です。
体内に腫瘍ができると、健康なときにはほとんどみられない特殊な物質が、その腫瘍により大量につくられ、血液中に出現してきます。この物質を「腫瘍マーカー」といいます。マーカーとは「指標」のことです。腫瘍マーカーは、がんの発生臓器と強い関連性をもつ特徴があるため(表1参照)、血液中にこの物質が基準値以上に出てきたときは、がんの存在が推測されます。 腫瘍マーカーの検査は、がんのスクリーニング(ふるい分け)の検査として有用です。しかし、現状ではまだ理想的な検査とはいえず、腫瘍マーカーが陽性だからといって必ずがんがあるわけではなく、反対に陰性だからといって完全にがんが否定できるわけではありません。
腫瘍マーカーの上昇はがんの進展に比例することが多く、早期がんでは正常値のこともあるため、現在のところ腫瘍マーカーの検査は、がんの早期発見のためというよりも、主としてがんを診断していくうえでのひとつの補助的な検査、あるいはがんを治療していくうえでの経過観察の検査として行われます。
おもな腫瘍マーカーを下の表1に示しました。本書では、この中からとくによく行われているAFP、CEA、CA19-9、PSA、肺がんマーカー(シフラなど)についてみていきます。
■表1 おもな臓器がつくる腫瘍マーカー
《肝臓》
[腫瘍マーカー]AFP、AFPL3、PIVKA-Ⅱ
《膵臓》
[腫瘍マーカー]CA19-9、CEA、Span-1、Dupan-2
《胆嚢》
[腫瘍マーカー]CEA、CA19-9
《胆道》
[腫瘍マーカー]CA19-9、CEA
《大腸》
[腫瘍マーカー]CEA、CA19-9
《肺》
[腫瘍マーカー]シフラ、SCC、NSE 、proGRP、SLX、CEA
《乳房》
[腫瘍マーカー]CA15-3、CEA
《卵巣》
[腫瘍マーカー]CEA、CA125
《子宮》
[腫瘍マーカー]SCC、CEA、CA125
《前立腺》
[腫瘍マーカー]PSA、γ-Sm、PAP
《食道》
[腫瘍マーカー]SCC、CEA
《胃》
[腫瘍マーカー]CEA、CA19-9
■表2 基準値(AFP、CEA、CA19-9、PSA、肺がんマーカーは本文参照)
PIVKA-Ⅱ:0.1AU/mℓ以下(EIA法)
Span-1 :30U/mℓ以下(IRMA法)
Dupan-2 :150U/mℓ以下(EIA法)
CA15-3 :30U/mℓ以下(ECLIA、EIA法)
CA125 :35U/mℓ以下(RIA法)
γ-Sm :4ng/mℓ以下(EIA法)
PAP :3ng/mℓ以下(RIA法)
出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報