精選版 日本国語大辞典 「自然哲学」の意味・読み・例文・類語
しぜん‐てつがく【自然哲学】
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自然界についての理論的・哲学的学説を一般的にさすが、主として近代自然科学成立以前のものについていわれる。自然学physica(ギリシア語)ともいう。
[横山輝雄]
人類誕生以来、自然界について経験的にいろいろなことが知られてきたが、古代文明の成立とともに、それらは知的な一貫した説明体系のなかに組み込まれた。当初それらは宇宙創成物語等の神話的・文学的形態をとっていたが、それを批判的・論理的に検討し、自然界の説明から擬人的・物語的要素を排除して理論的・体系的な説明が与えられるようになって、自然哲学が成立する。
古代ギリシアにおいて、タレスに始まる自然哲学者たちは、宇宙の構成元素についてさまざまな学説を提出し、それらは、土、水、空気、火の四大元素説へとまとめられた。自然は全体として有機的・生命的なものとして把握され、目的論的な見方によって統一的に理解された。アリストテレスによって完成されたこうした自然哲学においては、天動説が採用され、地球は宇宙の中心にあるとされた。あらゆる自然物は、その本性を実現する過程にあるとされ、生物にとっては親になること、煙にとっては上方へ移動すること、水にとっては下方へ移動することがその本性の実現であるとされた。このような自然哲学は、アリストテレスの学説がイスラム世界や中世ヨーロッパ世界に伝えられ、そこで広く受容されたため、それらの地域でも近代科学以前の支配的自然哲学となった。古代ギリシアには、原子論を説く機械論的な自然哲学も存在したが、それは無神論であり、宗教を否定するものであるとみなされ、一般には広がらなかった。
古代インドや中国も、それぞれ独自の自然哲学を発達させた。インドでもギリシアと同様に、宇宙の構成元素についてのいろいろな学説が提出され、また原子論的な学説も現れた。中国では原子論的な学説はほとんどみられず、有機的自然観が主流であった。陰陽五行説によって自然界の生成を説明し、理と気によって万物の構成を理解しようとした。こうした中国の自然哲学は日本にも伝わり、江戸時代の三浦梅園は独自の自然哲学の体系をつくりあげた。
[横山輝雄]
17世紀以降ヨーロッパで近代科学が展開されると、それ以前の伝統的自然哲学は、実験的・実証的根拠をもたない思弁であるとして否定されるようになり、自然哲学ということばもあまり使われなくなった。近代科学は、原子論的・機械論的な自然観をとっており、そのため19世紀前半のドイツを中心に、シェリングらによってそれに反対して有機的自然観が主張された。その学説がとくに自然哲学とよばれることもある。
[横山輝雄]
『コリングウッド著、平林康之・大沼忠弘訳『自然の観念』(1974・みすず書房)』▽『伊東俊太郎著『文明における科学』(1976・勁草書房)』▽『藪内清著『中国の科学文明』(岩波新書)』▽『辻哲夫著『日本の科学思想』(中公新書)』
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