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経量部 きょうりょうぶSautrāntika

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

経量部
きょうりょうぶ
Sautrāntika

経部ともいう。インド仏教一派部派仏教に含められる。1世紀なかば頃説一切有部から独立して成立したとされ,その先駆者として,比喩師と呼ばれるクマーララータ Kumāralāta (鳩摩羅駄と音写,童受と訳す) ,シュリーラータ Śrīlāta (室利羅多) が考えられており,ガンダーラの系統の一派であったらしい。特色は,釈尊の説いた経を特に重要視した点にあり,経に対する研究書である論を重要視した説一切有部などと好対照をなす。思想的な特徴は,もろもろの存在は仮の存在であると解し,過去になした行為 (業) が結果を導き出す潜在的な力 (種子〈しゅうじ〉) をもち,それらが「一味蘊 (いちみうん) 」と呼ばれる特殊な基体を構成し,これが現在から未来まで存在し続け,輪廻の主体となると主張したことにある。この派の系統からは,ハリバルマン Harivarman (→訶梨跋摩〈かりばつま〉) が出て,『成実論 (じょうじつろん) 』を著わした (3~4世紀頃) 。

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百科事典マイペディアの解説

経量部【きょうりょうぶ】

インド仏教の小乗の一派。3世紀末ごろ説一切有部から分派,クマーララブタが開祖。批判的・進歩的学説を展開し,説一切有部が〈論〉によったのに対し,〈経〉を判断の基準(量)とした。

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世界大百科事典 第2版の解説

きょうりょうぶ【経量部】

インド部派仏教中の一部派。サンスクリットでは〈サウトラーンティカSautrāntika〉。説一切有部から最後に分派した。従来は分派史《異部宗輪論》の記述により前1世紀の成立と考えられていたが,現在の研究によれば,後1世紀ごろ有部内に生じた異端者グループ〈譬喩者〉(ダールシュターンティカDārṣṭāntika)の教義が,論師クマーララータKumāralātaを経てその弟子シュリーラータŚrīlātaに至り整備されまとめられて,4世紀ごろ経量部が成立したとみられている。

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世界大百科事典内の経量部の言及

【実在論】より

…実在するからこそ,われわれは言葉によって意思を他人に伝え,言葉によって考え,行動し,生活することができるというわけである。これに対して,仏教(経量部,ないしその系統をひく論理学派)は,実在するのは刹那(せつな)(瞬間)に消滅する個物のみであり,普遍などは,われわれの分別(ふんべつ)によって捏造された虚妄なもので,たんなる名称,言葉としてあるにすぎないとする。これに類似した説を,ベーダーンタ学派,サーンキヤ学派も唱えている。…

【上座部】より

… 根本上座部は《異部宗輪論》によれば雪山(せつせん)部(ハイマバタHaimavata)とも呼ばれたという。上座部の教義は明らかではないが,その後200年してこの部派はさらに分裂を繰り返し,その中の犢子(とくし)部,化地(けじ)部,説一切有(せついつさいう)部,法蔵部,経量部などは精緻にして特色あるアビダルマ(論蔵)を構成して,部派仏教(小乗仏教)の展開に大きく貢献し,仏教思想全体に多大な影響を与えた。大衆部【加藤 純章】。…

【小乗仏教】より

…小乗仏教の思想は釈迦とその直弟子たちの初期仏教と,後の大乗仏教を理解する上にも重要である。 小乗仏教の中で特に重要な部派は,大衆(だいしゆ)部説一切有(せついつさいう)部,犢子(とくし)部,化地(けち)部,法蔵部,経量(きようりよう)部などであるが,現存資料としてはスリランカ上座部の伝持するパーリ語で書かれた論蔵と,漢訳に伝わる説一切有部のものがほぼすべてであり,他部派の論蔵はきわめて少ない。 小乗仏教の教理の特徴は,釈迦の教えをいかに正確に理解し整備するかという点にある。…

※「経量部」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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