原子や分子などが励起状態にあるとき,外部から何も刺激がなくとも自然に光(電磁波)を放出してエネルギーの低い状態に移る現象。直観的には,振動する電気的双極子から放出される電磁波という描像によっても理解できるが,その正しい起源と性質は量子力学によって初めて説明される。物質からの発光現象の大部分はこの過程によるものであり,その際個々の粒子からの発光過程は独立に,乱雑に起こるので,合成された放出光は位相の乱れたインコヒーレントな光となる。自然放出が起こるため,原子や分子が励起状態にとどまる時間は有限になり(他の原因もある),その平均時間を寿命という。寿命は放出される電磁波の波長の3乗に比例するので,短波長になると,急激に自然放出が起こりやすくなる。寿命の値は,電波領域で104秒以上,通常の光領域(赤外,可視,紫外)で10⁻3~10⁻9秒,X線領域で10⁻15~10⁻24秒の程度である。
自然放出を行う粒子が,ばらばらではなく,何らかの原因によって強い相関を生じて足並みそろえたふるまいをするようになると,自然放出の寿命は著しく短縮され,強力な光を放出する。これを超放射superradianceという。N個の粒子が完全な相関をもつと,寿命はN分の1になり,光強度は1粒子からの発光強度のN2倍になる(ふつうの自然放出ではN倍)。超放射は,純粋な自然放出というよりは,誘導放出の過程が暗に含まれている現象とも解釈されている。
執筆者:矢島 達夫
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…そしてこの光量子仮説を原子構造にとり入れることによって,N.H.D.ボーアは,原子の定常状態のエネルギーはとびとびの値しかとらず,原子がエネルギー2の定常状態から1(2>1)の定常状態へ遷移するとき,hν=2-1なる振動数νの光を放出するとして,原子スペクトルの規則性に説明を与えたのである。
[自然放出と誘導放出]
物質からの可視光や紫外光の放出は,通常,原子内電子の定常状態間の遷移による。高いエネルギーの定常状態にある原子は,より低いエネルギーの定常状態に自発的に遷移するので,このような機構による光の放出は自然放出と呼ばれる。…
…lightをmicrowave(マイクロ波)におきかえたメーザーmaserと同じ原理に基づく。
[原理]
分子(または原子,イオン)から電磁波(光もマイクロ波もその一種)が放射される機構は,自然放出と誘導放出の二つに大別される。分子の二つのエネルギー準位E1,E2(E2>E1)に注目して考えると,自然放出は,E2の状態にある分子が外部からの刺激なしにE1の状態に遷移し,その際に電磁波が放射される現象である。…
※「自然放出」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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