故事成語を知る辞典 の解説
自由を愛した文人、陶淵明
■ただ、故事成語の世界でひときわ大きな輝きを放っている漢詩人はと言えば、それは
■陶淵明は、姓は陶、正式な名を
■最後の就職は、数え年四一歳のとき。ある町の行政官になりましたが、この時も上官におもねることに嫌気が差し、在職わずか八〇余日で辞めてしまいました。その際、陶淵明が言い放ったことばからは、「五斗米に腰を折る」という故事成語が生まれています。
■そのまま故郷へと帰った陶淵明は、そのときの解放感を、「帰りなんいざ、田園まさに蕪れんとす」で始まる「帰去来の辞」という名文に書き残しています。
■以後の陶淵明は、故郷で自ら田畑を耕し、貧しいながらも心落ち着く生活を楽しみました。「菊を采る東籬の下、悠然として南山を見る」とは、そのゆったりとした暮らしぶりから生まれた、名句中の名句。また、「桃花源の記」という物語では、時代の流れにわずらわされず、自然と一体となって人々が暮らしている理想郷を鮮やかに描き出し、後世の芸術に大きな影響を与えました。「桃源」とは、この物語から生まれた故事成語です。
■陶淵明の文学は偉大ですが、本人自身は、何ごとにも強いこだわりを持たないことを信条としていました。その姿勢は、「書を読むを好めども、甚だしくは解せんことを求めず」ということばにも、よく現れています。そのような余裕のある生き方が、後世の人々から敬慕された結果、多くの故事成語として伝えられているのでしょう。
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