五斗米に腰を折る(読み)ごとべいにこしをおる

精選版 日本国語大辞典 「五斗米に腰を折る」の意味・読み・例文・類語

ごとべい【五斗米】=に[=の為(ため)に]腰(こし)を折(お)

  1. ( 「晉書‐隠逸」の「潜歎曰、吾不五斗米上レ腰」による語 ) わずかの俸祿を得るために、人に屈服して憐(あわれ)みを請う。多く下に否定の語を伴って用いる。
    1. [初出の実例]「為五斗米腰七十日在官而解切、嗚呼遅悟者哉」(出典:杜詩続翠抄(1439頃)五)

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故事成語を知る辞典 「五斗米に腰を折る」の解説

五斗米に腰を折る

生活の糧を得るために、上役の言うことに従うことのたとえ。

[使用例] 遂には所謂いわゆる五斗米のめに腰を屈して、交際社会に他と共に醜体を共にし[福沢諭吉*福翁百余話|1897~1900]

[使用例] 僕は『あに五斗米のために腰を折って郷里の小児にまみえんや』っていうような他人は好きですが、僕なら、反対に喜んで腰を折ってお米をもらいに行きますよ[原口統三*二十歳のエチュード|1948]

[由来] 「晋書とうせん伝」に見える、詩人とうえんめい(正式な名は陶潜)のことばから。五世紀の初め、東晋王朝の時代。ある町の長官をしていた陶淵明のところに、上官視察に訪れました。そのとき、「身なりを整えてお会いになりますように」と言われた陶淵明は、ため息をつき、「五斗米の為に腰を折るあたわず(わずかな給料のために、腰を低くして上官の機嫌を取るなんて、できない。「五斗米」は、わずかばかりの米。当時は給料として、お米が支給されていました)」と捨てゼリフを残して、辞職して故郷に帰ってしまったということです。

[解説] ❶官職を捨てて田舎に帰った陶淵明は、「帰りなんいざ、田園まさに蕪れんとすで有名な「帰去来の辞」をはじめ、田園での生活を高らかにうたいあげた作品を多く残し、「田園詩人」「隠逸詩人」として、後世、多くの人々から崇拝されることになりました。その人生の転換点となった、有名なエピソードです。❷故事成語としては、生活のために不本意ながら勤めを続ける場合に用いられます。上司の機嫌を取るわけですから、組織一員として働く場合が適切。また、「五斗米の為に腰を折らず」のように否定する形で、他人に指図される人生なんてまっぴらだ、という気持ちを表す場合もあります。

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