自由貿易地域(読み)ジユウボウエキチイキ(その他表記)free trade area

翻訳|free trade area

デジタル大辞泉 「自由貿易地域」の意味・読み・例文・類語

じゆうぼうえき‐ちいき〔ジイウボウエキチヰキ〕【自由貿易地域】

関税や輸入数量制限などの貿易障壁を相互に撤廃した国や地域の集団。ASEAN自由貿易地域(AFTA)・北米自由貿易協定NAFTA)・欧州経済領域(EEA)など。自由貿易圏。FTA(free trade area)。
外国から輸入した貨物を、通関手続きを経ることなく保管し、加工・製造・展示等を行うことができる一定の区域。貿易や外国企業の誘致を促進するために国が指定する。港湾や空港に隣接して設置され、域内に立地する企業は税制上の優遇措置などを受けることができる。輸出加工区(EPZ:export processing zone)、保税加工区(BPZ:bonded processing zone)、自由港(free port)などの名称で呼ばれるものもある。FTZ(free trade zone)。
[補説]日本では、沖縄県の那覇市に自由貿易地域、うるま市に特別自由貿易地域が設置されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「自由貿易地域」の意味・わかりやすい解説

自由貿易地域
じゆうぼうえきちいき
free trade area

政治的あるいは経済的に緊密な関係にある2か国以上の国が集まって、相互に関税その他の貿易取引制限を撤廃し、地域内の自由な商品流通を目ざす地域連合をいう。略称FTA。これと類似したものに関税同盟があるが、両者とも域内国間の関税・貿易制限の廃止では共通しているが、関税同盟が域外国に対して同一の関税・通商政策を適用するのに対し、自由貿易地域は、加盟国がそれぞれ自主性をもち独自の関税その他の通商規制を適用できる。自由貿易地域は関税同盟よりも緩やかな経済統合の一形態といえる。おもなものにNAFTA(ナフタ、北米自由貿易協定)、AFTA(アフタ、ASEAN自由貿易地域)、EFTA(エフタ、ヨーロッパ自由貿易連合)がある。NAFTAはアメリカ、カナダメキシコ3国で結ばれた自由貿易地域で、1994年に発足し、域内の関税の段階的撤廃が行われた。2020年に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が発効したため、NAFTAは失効した。AFTAはASEAN(アセアン東南アジア諸国連合)域内の経済協力を拡大、推進するために1993年に発足した。CEPT(共通有効特恵関税)制度を設け、関税引き下げを行うなどし、2015年発足のASEAN経済共同体(AEC)に引き継がれた。EFTAは当時のヨーロッパ経済共同体(EEC)に対抗するため1960年に結成されたもので、イギリスオーストリアデンマークノルウェーポルトガルスウェーデン、スイスの7か国で結成された。その後EC(ヨーロッパ共同体、現EU)加盟のため脱退が相つぎ、2021年現在、ノルウェー、スイス、アイスランドリヒテンシュタインの4か国からなる。EUとともに西ヨーロッパ全体での自由貿易の実現を目標としている。

[秋山憲治]

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改訂新版 世界大百科事典 「自由貿易地域」の意味・わかりやすい解説

自由貿易地域 (じゆうぼうえきちいき)
free trade area

2国または複数国家間による経済統合の一種で,この地域内においては相互の貿易に対する関税を撤廃することによって貿易の利益を享受することを目的とする。一方,第三国からの輸入に対して賦課される関税率の決定はメンバー各国の自由に任されている。ただし,第三国に対する関税率に十分大きな差があれば,第三国は域内の関税率の最も低い国にまず輸出し,そののち域内の無関税を利用して,域内各国に再輸出することも可能で,各国の貿易政策上の障害ともなりうる。この対域外関税率をメンバー国間で統一すれば,それを関税同盟と呼び,自由貿易地域より一歩統合の進んだものとして区別される。

 自由貿易地域の結成は一般に域内での貿易を増加させるが(貿易創出効果),場合によっては結成以前に存在していた第三国との貿易を減少させるおそれもある(貿易偏向効果)。参加各国は総合的にプラスの効果があると判断してこの自由貿易地域に加わるのであるが,それが第三国の犠牲を強いる可能性があるという意味で,GATT(ガツト)の無差別主義に反しているといえる。すなわち,最恵国待遇を第三国に与えることを拒否するからである。ただし,GATT自体は自由貿易地域と関税同盟の結成を例外として認めている(GATT24条8項)。

 実際に結成された代表的な自由貿易地域としては,ヨーロッパ自由貿易連合(EFTA)および中南米自由貿易連合(LAFTA)がある。EFTAはヨーロッパ経済共同体(EEC)に対抗してイギリスを中心とした7ヵ国によって1960年に結成され,67年までに域内の関税はほぼ撤廃された。のち73年1月にはEFTA内の2国,イギリスとデンマークがアイルランドとともにEECに加入し,EECとの協調を始めている。77年には両地域間の関税が撤廃され,84年1月には工業製品の数量規制も完全撤廃され,3億の人々を擁する世界最大の自由貿易地域となった。LAFTAはアルゼンチン,ブラジル,メキシコなど7ヵ国によって1960年に発足し,70年にはエクアドルほか4ヵ国が加わった。ただしLAFTAの場合,加盟国間に政治・経済事情の違いが大きく,本格的な自由貿易地域となるまでには至っていない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「自由貿易地域」の意味・わかりやすい解説

自由貿易地域
じゆうぼうえきちいき
free-trade zone

複数の国家間で関税,数量制限などの貿易障壁を撤廃し,貿易自由化を実現した地域。特恵制度(→特恵関税)よりも進んだ自由化の形態である。関税同盟とは異なり,域外諸国に対する共通の通商政策は採用せず,各構成国は域外諸国に対しては通商政策に関する行動の自由を保持している。第2次世界大戦後,地域経済統合の動きが盛んになる過程で多くの自由貿易地域が設定された。1960年に発足したヨーロッパ自由貿易連合 EFTA,1961年のラテンアメリカ自由貿易連合 LAFTAはその代表である。世界貿易機関 WTOの前身である関税と貿易に関する一般協定(ガット)も,域外諸国との貿易を阻害せず,域内貿易を拡大させるという条件のもとで自由貿易地域を容認していた。1992年にはアメリカ合衆国,カナダ,メキシコの間で北米自由貿易協定 NAFTAが締結され,自由貿易地域は新たな広がりをみせた。アジアではシンガポールが自由貿易協定に積極的で,2001年1月にニュージーランドと,2002年1月に日本との間で協定に調印している。この日本・シンガポール新時代経済連携協定は日本にとって初の二国間自由貿易協定である。

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ASCII.jpデジタル用語辞典 「自由貿易地域」の解説

自由貿易地域

物品の関税、その他の制限的な通商規則、サービス貿易の障壁などが存在しない地域。大きく、(1)外国との自由貿易が認められている「自由港」タイプ(2)原材料の輸入、加工、再輸出を行なう「輸出自由地域」タイプ(3)国内に移入されるまでは輸入品に課税しないことで貿易の促進を図る「外国貿易地帯」タイプ(4)内陸国への貨物輸送の拠点となるため関税も輸入規制も設けていない「中継地」タイプ、に分かれる。例えば、自由港タイプでは、中国の自由貿易の一大拠点である香港が挙げられる。また、日本では外国貿易地帯タイプに類似した地域として「保税地域」がある。保税地域では輸出入手続きの効率化が掲げられ、貨物の輸入手続を未済のまま蔵置し、加工、製造、展示等をできる。

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百科事典マイペディア 「自由貿易地域」の意味・わかりやすい解説

自由貿易地域【じゆうぼうえきちいき】

FTZ(Free Trade Zoneの略)とも。非関税の措置がとられている地域を指す。自由港のほか,原材料加工や貨物の中継地点などに設けられている。香港やシンガポールが自由港の自由貿易地域として知られる。

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世界大百科事典(旧版)内の自由貿易地域の言及

【関税同盟】より

…二つ以上の国家が共同の関税地域を設け,この地域内における関税その他の貿易制限を撤廃し,地域外の国家に対しては共通の関税率やその他の貿易規制を適用することを目的とする協定をいう。加盟国間の関税その他の貿易制限は撤廃するが,地域外への関税率等については各国が決定権を保持する場合を自由貿易地域free trade areaという。関税同盟に加えて,資本や労働移動の制限をも廃止したり,さらに金融政策・財政政策等に関しても加盟国間相互の調整を行う場合を,それぞれ共同市場,経済同盟という。…

【関税同盟】より

…二つ以上の国家が共同の関税地域を設け,この地域内における関税その他の貿易制限を撤廃し,地域外の国家に対しては共通の関税率やその他の貿易規制を適用することを目的とする協定をいう。加盟国間の関税その他の貿易制限は撤廃するが,地域外への関税率等については各国が決定権を保持する場合を自由貿易地域free trade areaという。関税同盟に加えて,資本や労働移動の制限をも廃止したり,さらに金融政策・財政政策等に関しても加盟国間相互の調整を行う場合を,それぞれ共同市場,経済同盟という。…

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