舌切雀(読み)したきりすずめ

精選版 日本国語大辞典 「舌切雀」の意味・読み・例文・類語

したきり‐すずめ【舌切雀】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 動物昔話。善良な老爺の飼っていた雀が糊をなめたのに腹を立てた老婆が、雀の舌を切って追い出す。老爺は雀の行方を求めて雀の宿に至って歓待を受け、土産に宝のはいっているつづらをもらって帰る。それをうらやんで、老婆もまねるが、今度のつづらには蛇、毒虫などがはいっていたという話。「宇治拾遺物語」には古い型を伝える、腰を折られた雀と二人の老婆の説話が見え、類話はアジアの各地に伝わる。隣の爺型の動物報恩説話に分類される。
    1. [初出の実例]「来啼ぬや舌きり雀ほととぎす〈貞室〉」(出典:俳諧・玉海集(1656)二)
  3. 舌を切られた雀のように、心に思うことを口に出せないこと。うまく言い表わせないこと。また、その人。
  4. ( から比喩的に ) 主人のもとを追い出されること。家を追い出されること。また、その人。

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改訂新版 世界大百科事典 「舌切雀」の意味・わかりやすい解説

舌切雀 (したきりすずめ)

昔話。飼っていたスズメが糊をなめたので,飼主がスズメの舌を切る。スズメは迫害を逃れて山へ去る。後日スズメを探しに行った心清い爺婆に富を授け,それを真似た者には災いを与えると語る本格昔話。五大お伽噺の一つ。一般的には,婆が舌を切り,欲ばりをして大きな土産を望み,ハチや蛇にかまれて手ひどい目にあうとされる。しかし,舌を切る役が爺であることも少なくない。スズメと爺婆との出会いについても,怪我をしたスズメを介抱することに始まるもの,籠に入った姿で川上から流れ寄ったのを拾い育てるものなど種々に語られる。親切な爺婆がスズメを探しに行く途中,かなり汚い内容の難題が課せられたり,困難な労働を条件にスズメと再会する例などもある。舌を切ることが人々の興味を集め,題名の由来になったとみられる。これには江戸時代の赤本・青本など読本(よみほん)の流布による強い影響が認められる。赤本には〈したきれすずめ〉とある。江戸時代,曲亭馬琴,黒沢翁満により《宇治拾遺物語》にある〈雀報恩事〉を〈舌切雀〉の原拠とする説が行われた。また《嬉遊笑覧》では《捜神記》にみられる中国説話を源泉にみたてている。この昔話は,特別な姿や形状でこの世に出現する小さ子の物語の一つである。神の子としての際立つ特徴をもつという点で,舌を切るスズメの物語が注目されなければならない。羽切雀,尾羽切雀,耳切雀なども同系列の語りである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「舌切雀」の意味・わかりやすい解説

舌切雀
したきりすずめ

日本に伝わる五大昔話 (御伽話) の一つ。動物昔話。正直な爺が飼っていたすずめが,隣の婆の糊をなめたので婆はすずめの舌を切ってしまう。爺は舌切りすずめのお宿をたずねていくと大変もてなされて,帰りにみやげをもらい,帰って開けてみると,宝物が出てくる。それを聞いた婆が,同じようにお宿をたずねて,重いつづらをもらって帰る。開けると,中から三つ目小僧などが出てきて,婆は驚き死ぬ。原型は,川上からうりが流れてきてすずめが出てきたとか,鳥籠が流れてくるという話であることから,もとは「桃太郎」などと同一系統の昔話であったと考えられる。糊は異常誕生譚に常にある食物で,その一挿話が変化したものといえる。

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百科事典マイペディア 「舌切雀」の意味・わかりやすい解説

舌切雀【したきりすずめ】

糊(のり)をなめて婆(ばば)に舌を切られた雀の昔話。やさしい爺(じじ)は雀の宿をたずね宝物をもらうが,婆はそれをまねして失敗。雀の報恩談は,腰折れ雀を助けた恩返しに米のなる瓢(ふくべ)をもらう話など類話が多く,《宇治拾遺物語》にもみえ,朝鮮,中国にもある。

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世界大百科事典(旧版)内の舌切雀の言及

【スズメ(雀)】より

…スズメの色彩はじみで,人々に注目されることは少なかったが,喉部(こうぶ)の黒色模様が特徴的なので,昔話の〈雀孝行〉では親の臨終の知らせにあわてたスズメが御歯黒をつけそこない,それが模様になったとする由来譚が語られている。白いスズメは来福の兆しと考えられたが,昔話でも〈舌切雀〉のように,スズメは人間に富を与える鳥としても語られた。《宇治拾遺物語》にも,腰を折られたスズメを老婆が助けたところ,そのスズメがヒョウタンの種子をもたらし,成長したヒョウタンの中から白米が生じたとするスズメの報恩譚が見える。…

※「舌切雀」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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