船通山(読み)せんつうざん

日本歴史地名大系 「船通山」の解説

船通山
せんつうざん

横田町と鳥取県日野ひの日南にちなん町との県境にまたがる山で、標高一一四二・五メートル。比婆道後帝釈ひばどうごたいしやく国定公園に属する。古代から出雲伯耆の国境をなす。「日本書紀」神代上に「簸の川上に所在る、鳥上の峯」、「古事記」の天照大神と須佐之男命段には「肥河上、名は鳥髪といふ地」とみえ、「鳥上の峯」「鳥髪といふ地」は現在横田町を西流する斐伊川上流の当山のこととされる。「出雲国風土記」の仁多郡には鳥上とりかみ山とあり、仁多郡家の南東三五里に位置していた。須佐之男命は八岐大蛇退治の舞台に擬せられ、その折大蛇の体内から取出されたのが草那芸大刀(草薙剣、別名天叢雲剣)といわれる。


船通山
せんつうざん

日南町と島根県横田よこた町との県境にまたがる山。標高一一四二・五メートル、比婆道後帝釈ひばどうごたいしやく国定公園に属する。中国山地の主峰の一つで、古代以来伯耆・出雲の国境をなす。江戸時代には上萩山かみはぎやま村から北西麓の萩山峠(現在の竜駒)を越えて出雲国仁多にた横田村(現横田町)に至る横田越の道が通る。鳥髪とりかみ山・鳥上山とも記され、「とかみ」とも訓ずる。「古事記」天照大神と須佐之男命段によると、追放された須佐之男命は「出雲国の肥の河上、名は鳥髪といふ地」に下っており、鳥髪の地は現在の島根県東部を流れる斐伊ひい川上流の当山のこととされる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「船通山」の意味・わかりやすい解説

船通山
せんつうざん

鳥取県日野(ひの)郡日南(にちなん)町と島根県仁多(にた)郡奥出雲(おくいずも)町の県境にある山。標高1142メートル。『古事記』伝承地で、須佐之男命(すさのおのみこと)が天降(あまくだ)った「肥(ひ)の河上(かわかみ)なる鳥髪(とりかみ)の地(ところ)」とされ、高志(こし)の八岐大蛇(やまたのおろち)を退治して草薙剣(くさなぎのつるぎ)(天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ))を得た所という。「肥の河」は鳥取県の日野川(ひのがわ)か、島根県の斐伊川(ひいかわ)かの論争のすえ、両県神職会の合議で、山頂に天叢雲剣出現之地の碑が立てられている。一帯古来良質の鋼(はがね)用真砂砂鉄の産地で、たたら製鉄の中心地。九合目の神木イチイは国の天然記念物で、樹高5.4メートル、根囲8.3メートル、枝張(えだはり)191平方メートルで世界最大の雌株という。比婆道後帝釈(ひばどうごたいしゃく)国定公園内に属し、JR伯備線生山(しょうやま)駅から多里(たり)までバスがあり、頂上まで6キロメートル。

[岩永 實]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「船通山」の意味・わかりやすい解説

船通山
せんつうざん

鳥取県南西端,日南町と島根県奥出雲町との県境にある山。標高 1142m。スサノオノミコトの降臨はこのあたりと伝えられ,八岐大蛇 (やまたのおろち) を退治して草薙剣 (くさなぎのつるぎ) を得た地とされる。付近で砂鉄を産し,古くからたたら製鉄の中心地。名剣の伝説もこれに関係深い。山頂付近にある根まわり約 8mの神木イチイの雌株は樹齢推定 2000年で,国指定天然記念物。比婆道後帝釈国定公園に属する。

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