良薬口に苦し(読み)りょうやくくちににがし

  • りょうやく
  • ろうやく
  • 口(くち)に苦(にが)し
  • 良薬

精選版 日本国語大辞典の解説

良い薬は苦くて飲みにくいが、病気のためにはすぐれたききめがある。忠言、諫言は聞きにくいが、その身のためになることにたとえてもいう。
※明衡往来(11C中か)下本「愚老之言如良薬之苦一レ口」 〔孔子家語‐六本〕
※曾我物語(南北朝頃)四「らうやくはくちににがくして、しかも病に利あり」

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ことわざを知る辞典の解説

よい薬は苦くて飲みにくいが、気の治療にはすぐれたききめがある。転じて、過ちを指摘し、いさめてくれることばは素直に聞き入れにくいが、本人のためになることのたとえ。

[使用例] 人間は口癖の様に良薬口に苦しと言って風邪などをひくと、顔をしかめて変なものを飲む。飲むからなおるのか、癒るのに飲むのか、今迄疑問であったが丁度いい幸だ[夏目漱石*吾輩は猫である|1905~06]

[使用例] 腹あ立っちゃいけねえよ、良薬は口に苦しといってね、いい医者ほど苦い薬を飲ませるんだぜ、これから、遠慮なく、思ったところをズバズバ言ふからね、苦いと思ったら、道庵は、さすがに医者だと思ってくんな[中里介山*大菩薩峠|1913~41]

[解説] 今日では、薬が飲みやすくなりましたが、漢方薬は苦いものが多く、飲むのもたいへんでした。しかし、苦い薬は服用すれば病気をなおす効果があります。また、友人や先輩の忠告、臣下かんげんは素直には聞けず、つい反発しがちですが、冷静に耳を傾けることができれば本人の将来のためになるものです。
 「後漢書」や「史記」などに由来する表現で、日本でも平安時代には知識人の間で知られていたようです。漢籍では、「良薬口に苦し忠言耳にさかう」という対句形式で、今日でも「忠言耳に逆う」と続けていうことがあります。江戸時代になると、庶民の間でも前半の「良薬口に苦し」がひろく知られるようになりました。前半だけで後半の意味も示唆するのは、書き下し文の記憶というよりも、むしろ江戸いろはかるたの影響が大きいものと思われます。かるたの絵札には、薬と無関係に、臣下の忠言を苦い顔で聞いている殿様が描かれていたのです。

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