明衡往来(読み)メイゴウオウライ

デジタル大辞泉 「明衡往来」の意味・読み・例文・類語

めいごうおうらい〔メイガウワウライ〕【明衡往来】

平安後期の往来物。2巻または3巻。藤原明衡ふじわらのあきひら著。成立年未詳。漢文で書かれた男子用の書簡文例集。現存往来物では最古雲州消息。雲州往来。

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精選版 日本国語大辞典 「明衡往来」の意味・読み・例文・類語

めいごうおうらいメイガウワウライ【明衡往来】

  1. 平安後期の往来物。二または三巻。藤原明衡(あきひら)著と伝えられる。一一世紀中頃の成立。寛永一九年(一六四二)刊。男子用の手紙文例集。廷臣生活に必要な内容を変体漢文でつづり、進状と返状を並列する。典拠の明らかな故事成語を多く用い、日常生活に欠かせない事象や文字を学ぶための教科書の役割をもっていた。現存最古の往来物で、後の規範となった。雲州往来。雲州消息

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「明衡往来」の意味・わかりやすい解説

明衡往来
めいごうおうらい

平安時代の書簡文および教科書。三巻または二巻。藤原明衡(あきひら)著。成立年未詳。『雲州消息(うんしゅうしょうそく)』『明衡消息』『雲州往来』などともよばれるが(往来は書簡文例をいい、消息は手紙そのものをいう)、後人の命名であろう。諸本により内容配列を異にするが、群書類従本では211通の消息を上中下三巻に分かち、さらにそれぞれを本末に分かち、各巻にほぼ正月より月を追って進状とそれに対する返状とを並べて掲げる。当時の貴族の日常生活、つまり恒例臨時儀式法会(ほうえ)、民間の年中行事から任官恪勤(かくご)や荘園(しょうえん)および遊覧宴会、また品物の贈与貸借などに関するものが多い。明衡没後の書簡も含まれるが、往来物の祖として実用および啓蒙(けいもう)の点で貴重な文献である。

[大曽根章介]

『石川謙著『古往来についての研究』(1949・講談社)』『三保忠夫・三保サトコ編著『雲州往来、研究と総索引』(1982・和泉書院)』

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改訂新版 世界大百科事典 「明衡往来」の意味・わかりやすい解説

明衡往来 (めいごうおうらい)

現存する日本最初の模範書簡文例集。3巻。平安時代の漢文学者藤原明衡(あきひら)の著。明衡が出雲守であったので《雲州消息》《雲州往来》などともよばれる。各巻1月から月を追って進状とそれに対する返状とが並べ掲げられ,当時の都人の日常生活,恒例や臨時の儀式や年中行事をはじめ遊覧や宴会などに関する内容が多い。中国における〈書儀〉の類の影響によると思われるが,わが国のもっとも古い往来物として価値は大きい。
往来物
執筆者:

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「明衡往来」の解説

明衡往来
めいごうおうらい

「明衡消息」「雲州往来」「雲州消息」とも。往来物の一つ。古来作者は藤原明衡(あきひら),成立時期は彼の晩年の11世紀後半とされてきたが,疑問視する説もある。貴族相互または貴族と僧侶の往復書簡集のかたちをとる。内容は,交遊・贈答・貸借・依頼・昇進・占卜(せんぼく)・質義・神事・祭礼・仏事・地方官動静・作歌・作文など。当時の貴族と僧侶の日常生活や行事の世界を知る好個の素材。「群書類従」所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「明衡往来」の意味・わかりやすい解説

明衡往来
めいごうおうらい

往来物の一種。3巻。『雲州消息』『雲州往来』ともいう。藤原明衡著といわれ,平安時代後期の成立。各巻それぞれ,正月から月ごとに当時のおもに貴族間の進状と返状とをあげている。江戸時代まで文例集,習字の手本として広く用いられた。

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旺文社日本史事典 三訂版 「明衡往来」の解説

明衡往来
めいこうおうらい

平安時代,藤原明衡 (あきひら) の著した往来物
『雲州消息』ともいう。11世紀の成立。2巻本と3巻本がある。現存最古の往来物で,正月から12月までの進書・返書を200余通集めた男子用の模範手紙集。文例集・手習い本として江戸時代まで使用された。

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世界大百科事典(旧版)内の明衡往来の言及

【往来物】より

… 数多い往来物の中で,近世以前に作られたものを,一般に古往来と呼ぶ。現在40種が知られる古往来の中で,もっとも古いものとされるのは《明衡(めいごう)往来》であり,11世紀に文章博士,大学頭などを歴任した藤原明衡(あきひら)によって作られた。200余通の書簡を集め,正月から12月まで月を追って配列したこの書簡集は,《雲州往来》《雲州消息》などとも呼ばれ,文例集として広く用いられた。…

【漢文】より

…また一方では,詩文を作るための手引書として《作文大体(さくもんだいたい)》などが作られた。これは正格の漢詩文を作るためのものであるが,和習を含んだ書簡文のための範例文集とでもいうべき《明衡(めいごう)往来》《庭訓往来》などの往来物も作られた。この類のものには,正倉院文書として残存する聖武天皇妃光明子の手写になる《杜家立成(とかりつせい)》があり,その辺に淵源すると思われる。…

【書札礼】より

…このような動きに応じて《雲州消息》が編まれる。これは《明衡(めいごう)往来》ともいわれ,出雲守藤原明衡の手になる往復書簡の例文集で,以後数多くみられる往来物の最初に位するものである。《雲州消息》はまだ書札の範例集にすぎないが,平安末期に藤原忠親の著した《貴嶺問答》にいたってはじめて書札礼に関する記事がみられる。…

※「明衡往来」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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