平安時代の書簡文および教科書。三巻または二巻。藤原明衡(あきひら)著。成立年未詳。『雲州消息(うんしゅうしょうそく)』『明衡消息』『雲州往来』などともよばれるが(往来は書簡文例をいい、消息は手紙そのものをいう)、後人の命名であろう。諸本により内容配列を異にするが、群書類従本では211通の消息を上中下三巻に分かち、さらにそれぞれを本末に分かち、各巻にほぼ正月より月を追って進状とそれに対する返状とを並べて掲げる。当時の貴族の日常生活、つまり恒例や臨時の儀式法会(ほうえ)、民間の年中行事から任官恪勤(かくご)や荘園(しょうえん)および遊覧宴会、また品物の贈与貸借などに関するものが多い。明衡没後の書簡も含まれるが、往来物の祖として実用および啓蒙(けいもう)の点で貴重な文献である。
[大曽根章介]
『石川謙著『古往来についての研究』(1949・講談社)』▽『三保忠夫・三保サトコ編著『雲州往来、研究と総索引』(1982・和泉書院)』
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「明衡消息」「雲州往来」「雲州消息」とも。往来物の一つ。古来作者は藤原明衡(あきひら),成立時期は彼の晩年の11世紀後半とされてきたが,疑問視する説もある。貴族相互または貴族と僧侶の往復書簡集のかたちをとる。内容は,交遊・贈答・貸借・依頼・昇進・占卜(せんぼく)・質義・神事・祭礼・仏事・地方官動静・作歌・作文など。当時の貴族と僧侶の日常生活や行事の世界を知る好個の素材。「群書類従」所収。
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… 数多い往来物の中で,近世以前に作られたものを,一般に古往来と呼ぶ。現在40種が知られる古往来の中で,もっとも古いものとされるのは《明衡(めいごう)往来》であり,11世紀に文章博士,大学頭などを歴任した藤原明衡(あきひら)によって作られた。200余通の書簡を集め,正月から12月まで月を追って配列したこの書簡集は,《雲州往来》《雲州消息》などとも呼ばれ,文例集として広く用いられた。…
…また一方では,詩文を作るための手引書として《作文大体(さくもんだいたい)》などが作られた。これは正格の漢詩文を作るためのものであるが,和習を含んだ書簡文のための範例文集とでもいうべき《明衡(めいごう)往来》《庭訓往来》などの往来物も作られた。この類のものには,正倉院文書として残存する聖武天皇妃光明子の手写になる《杜家立成(とかりつせい)》があり,その辺に淵源すると思われる。…
…このような動きに応じて《雲州消息》が編まれる。これは《明衡(めいごう)往来》ともいわれ,出雲守藤原明衡の手になる往復書簡の例文集で,以後数多くみられる往来物の最初に位するものである。《雲州消息》はまだ書札の範例集にすぎないが,平安末期に藤原忠親の著した《貴嶺問答》にいたってはじめて書札礼に関する記事がみられる。…
※「明衡往来」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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