日本大百科全書(ニッポニカ) 「色ガラス」の意味・わかりやすい解説
色ガラス
いろがらす
colored glass
ガラスに着色したもので、着色ガラスともいう。多くの製法があり、安定性も半永久的なものから紫外線や熱に弱いものまでいろいろある。ガラス自体は一般にきわめて安定なので、着色剤を加え高温で溶融してつくられた色ガラスはガラスの内部まで着色しているから、ガーネットやエメラルドと同じくその色は不変である。反対に有機着色剤などをガラス表面に塗布したものは耐候性が弱く、はげたり退色したりしやすい。
内部着色でも、ガラス中での着色剤の状態がイオンであるかコロイドであるかによって同じ物質でも色が違い、また同じイオンでも原子価によって別の色になったりする。これらはすべてガラス原料の調合組成、溶融および冷却条件に左右されるので、希望する色をつくるには知識と経験が必要である。ステインは、数百度に加熱しながら拡散によって着色剤をイオン状態で表面からしみ込ませて着色する。焼き付けは、セラミック顔料とよばれる微粉状のガラス状顔料を有機溶媒に混ぜ、スクリーン印刷などによって表面に塗り数百度に加熱して融着する。これら加熱による表面着色は比較的じょうぶである。ガラスはX線などの放射線によって着色することが多いので、これを利用して特殊な色ガラスをつくることも可能であるが、温度が上がったり、高エネルギーの光が当たったりすると消色しやすい。
色ガラスは古代から工芸品、ステンドグラスなどに用いられてきたが、現代では、自動車用ガラス、照明器具、サングラス、光学器械などと用途が急速に広がってきている。しかし色ガラスよりも無色に近いガラスをつくるほうがはるかにむずかしい。
[境野照雄・伊藤節郎]