中国元代に用いられた社会的身分をあらわす用語。元朝は治下の諸民族を蒙古人,色目人,漢人(旧金国支配下の中国人と契丹,女真,高麗人),南人(旧南宋領内の中国人)の四つに区分し,この順位でそれぞれの身分,待遇に差等をつけた。色目人とはもろもろの種類の人を意味する諸色目人の略でウイグル,ナイマン,タングート,カルルク,キプチャクをはじめペルシア,アラブ,ヨーロッパ等の二十数種の諸民族を包含する。彼らは比較的早くモンゴルに帰属,征服された西方系ないし北方系の住民で,中国とは別の固有の文化伝統をもつものも多かった。少数のモンゴル人の武力で圧倒的に優勢な中国人を支配した元では,モンゴルに協力的な彼ら第三勢力を支配層に取り込み,政治,軍事,経済などの実務畑にその力を活用し,モンゴル支配の基礎とした。彼らは権力を盾に中国人を抑圧することが多く,ほとんど中国人社会と融合しなかった。
執筆者:杉山 正明
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中国の元代(1271~1368)に、モンゴル人、漢人(旧金国人)、南人(旧南宋(なんそう)人)以外の人々をさした名称。タングート、ウイグル、ナイマンなど、主として西方諸地方出身の人々が含まれる。語源は「さまざまな種類の人」の意味の「諸色目人」の省略とも考えられている。色目人は、モンゴル人の中国支配の重要な担い手で、地方の行政上の長官であるダルガチにはモンゴル人以外では色目人だけが任用されるという原則がしだいに確立していき、科挙試験で優遇されるなど多くの特権を有した。また、色目人で編成されたハンの軍隊も多数あり、中央の高官も輩出し、ハンの継承問題に介入する有力者もあった。
[松田孝一]
『箭内亙著『蒙古史研究』(1930・刀江書院)』
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諸色目人(諸種族に属するもの)の略で,元朝治下の西域諸国人をさす。漢人より早くモンゴルに服属し,かつ高い文化を持っていたので,モンゴル人に次ぐ準支配階級として,漢人,南人(蛮子(マンジ))の上に立ち,優遇されるとともに,政治,経済,文化面で活躍した。
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…もっとも元朝は創設後20年にして南宋を併合して全中国を版図内に含めたから,同じく征服王朝とはいっても,先輩のキタイ遼帝国,ジュルチン金王朝なみの簡単な統治様式ではすまされない。 首都をモンゴリアのカラコルムから漢地の燕京(現,北京市)に移し,国号を大元と称し,中統と建元した元朝は,いよいよ中国内地に乗り込んで全領域の統一支配に着手することになるのであるが,その場合,金国の故地たる漢地こそが新国家の基盤であり(漢地を中書省腹裏と称して中央政府みずからが直轄するという前例のない統治制度),政権を担当すべき高級職官はひとり譜代関係をもつモンゴル,色目,漢人に限る(百官の長はモンゴルもしくは色目人をもってし,根脚ある漢人はこれに準ずという特異な官制)という統治綱目が鮮明にされた。この体制の下にあっては,かつての本土であったモンゴリア(達達地面)と南宋の故地たる江南が政局中枢部から疎外されるのは必然である。…
…制度の中に重い位置づけをもって取り込まれたモンゴル的軍民官制(達魯花赤(ダルガチ),千戸長,世襲制),モンゴル人一般に許された政治・法律上の優遇規定,諸王・功臣に対する恒常的歳賜を通じて間接的にモンゴル民衆に及ぶ莫大な物質的賜与などはモンゴル至上主義として周知されるところである。このような主権者モンゴルの主体性保持を達成するため西域人を主とする治下の非漢文化諸種族を色目(しきもく)人として一括し,彼らに協力者としての特権を与えるとともにそれぞれ本俗法の維持を規定したのは実に異色ある政策であった。一つの全体社会の中に漢人,モンゴル,色目諸種族という個別社会が並存して元朝100年間の中国支配が維持できたとすれば,元朝創設者としての世祖の意義はそこにも認められるであろう。…
※「色目人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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