苞飯,法飯,餝飯などとも書く。《本朝食鑑》(1697)は,これはもともと僧家の料理で,飯の上に,野菜や乾魚を細かく切って煮たものあるいは焼いたものをのせ,汁をかけて食う,としている。より古く室町時代には宮廷や武家の間でも盛んに行われた。飯の上に,5種のものを盛るのが通例だったらしいが,その5種を春夏秋冬と土用になぞらえて置く置き方や,それをどのように食べていくかという食べ方などが,いろいろな故実書に書かれている。ただし,それらの記述は決して統一的なものではなく,雑然たる印象を残すのみであるが,要するに芳飯とは五目飯だったようである。貞享・元禄(1684-1704)ころの江戸では,のちにはたけのこ飯を名物とした目黒で,浪屋の芳飯というのが有名だった。やや特殊ではあるが,全国的に知られていたのは豊後の黄飯(おうはん)である。クチナシで黄色に染めた飯の上に,ナス,ズイキ,ゴボウ,ネギなどと,コチやカマスなどの魚をいっしょに煮たものをのせ,かきまぜて食うというもので,同国出身の農学者大蔵永常はその著《徳用食鏡》(1833)の中で推賞している。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…江戸時代には骨董飯と書いて〈ごもくめし〉と読ませた。より古く芳飯(ほうはん)(包飯,苞飯,法飯とも書く)と呼ばれたのも同じもので,《料理網目調味抄》(1730)に〈鳧(かも)飯,雉子(きじ)飯,鰝(えい)飯,めばる飯,初茸・松茸めし,皆鶏飯悖(けいはんもどき)にして芳飯也,……又葱(ねぎ),牛旁(ごぼう),しめじ,椎茸,芹,焼麩,何れも線に切(きり),味付(あじつけ),飯に覆たる皆包飯也〉とある。好みの材料をこまかく切って調味し,茶飯ふうに炊きあげた飯に混ぜるか,米に混ぜて炊きあげる。…
※「芳飯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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