日本大百科全書(ニッポニカ) 「草地鉱」の意味・わかりやすい解説
草地鉱
くさちこう
kusachiite
第二銅と蒼鉛(そうえん)の複酸化物。1995年(平成7)、逸見(へんみ)千代子(1949― )によって岡山県川上(かわかみ)郡備中(びっちゅう)町(現、高梁(たかはし)市備中町)布賀(ふか)から記載された新鉱物である。トリプケ石trippkeite(化学式Cu2+As2O4)のビスマス(Bi)置換体にあたり、トリプケ石系を構成する。形態は短柱状で、多くは粒状。比較的高温生成のスカルンを貫く方解石脈中に産する。現在までに原産地以外から産出の報告はない。
共存鉱物は逸見石(へんみいし)、黒銅鉱tenorite(CuO)、シレン石、ベイカー石bakerite(Ca4B4[(OH)4|BO3OH|(SiO4)3])、バルトフォンティン石bultfonteinite(Ca2[F|SiO3OH]・H2O)、ブルース石、クスピディンcuspidine(Ca4[(F,OH)2|Si2O7])、ソーマス石、方解石など。硫化物よりは黒いが金属光沢。条痕(じょうこん)はほとんど黒色であるが、わずかに赤褐色味をみせる。直交する二方向の劈開(へきかい)があるが、つねに観察はできない。命名は岡山大学名誉教授であり鉱物学者の草地功(いさお)(1942― )にちなむ。
[加藤 昭]