日本大百科全書(ニッポニカ) 「逸見石」の意味・わかりやすい解説
逸見石
へんみいし
henmilite
ホウ酸塩鉱物の一つ。1986年(昭和61)中井泉(いずみ)(1953― )らによって報告された新鉱物。岡山県備中(びっちゅう)町(現、高梁(たかはし)市備中町)布賀(ふか)鉱山(閉山)の再結晶石灰岩の採掘場から発見され、方解石、ペンタヒドロボライトpentahydroborite(化学式Ca[B2O(OH)6]・2H2O)、ブルース石と共存する。自形は鋭角的に交差する基本的な卓面からなる三斜立体。このほかに銅を主成分として含むホウ酸塩鉱物は、バンディ石bandylite(Cu[Cl|B(OH)4])が知られるのみであるが、両者ともB(OH)4というホウ素ヒドロキシ基四面体を基本基としてもっている。ただし逸見石はおそらく熱水起源、バンディ石は乾燥気候に恵まれた銅鉱床の二次鉱物で、この基本基を含むホウ酸塩の生成温度領域の広さがうかがえる。命名は鉱物学者の逸見吉之助(きちのすけ)(1919―1997)にちなむ。
[加藤 昭 2018年7月20日]