日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソーマス石」の意味・わかりやすい解説
ソーマス石
そーますせき
thaumasite
カルシウムおよびケイ素の含水炭酸塩硫酸塩鉱物。ケイ素を含んでいるが、ケイ素原子の周囲に6個の(OH)が配位しているため、系統分類上は類似物の多さもあって硫酸塩鉱物に分類され、エットリンゲン石群に入れられている。自形は非常に微細な六角針状。多く粉末状あるいは塊状。玄武岩などの空隙(くうげき)中や石灰岩起源のスカルンの最末期産物として、あるいは海底火山で噴出した玄武岩質溶岩と海水との反応産物として、さらには地熱帯で熱水変質産物の一つとして産する。日本では山形県鶴岡市五十川(いらがわ)で玄武岩の空隙に、埼玉県秩父市秩父鉱山でスカルン中から知られている。
共存鉱物は灰束沸石(かいそくふっせき)stilbite-Ca(化学式Ca[Al2Si7O18])、方沸石、フッ素魚眼石fluorapophyllite-(KF)(KCa4[(F,OH)|(Si4O10)2]・8H2O)、方解石、石膏(せっこう)、黄鉄鉱、灰礬(かいばん)ざくろ石、ベスブ石など。同定は白色、繊維状あるいは細粉状で非常に比重が小さい感じがする。一つの鉱物集合の最末期の生成物であること、集合中には他の鉱物がほとんど入ってこないことなど。英名は驚異thaumazeinを意味するギリシア語に由来し、1878年の発見当時、成分元素の組合せが他に例のないものであったことによる。
[加藤 昭]